電力システムの世界は奥が深い。電気に関する技術のみならず、実社会の経済や政策とも密接に関わる。横浜国立大学大学院の辻隆男准教授は「自国の将来を見据え、どのようなシステムを作っていくのかを新しい発想で考えるのが研究の一番の魅力」と話す。
「とはいえ、『考える』という課題を与えると戸惑う学生もいる。どうすれば伸びるか、日々悩みながら指導に当たっている」。時には研究室にこもる学生と、夜通しチャットで相談に乗るなど、学生にとっては頼れる兄のような存在だ。
多様な要素が複雑に絡み合い、学問的に美しい体系
自身が研究の魅力に気付いたのは横浜国立大の学生だった頃、大山力教授の講義を受講したことがきっかけ。「工学部の授業を受けていて、ここまで多様な要素が複雑に絡み合い、学問的に美しい体系を成しているテーマはほかになかった」。話を聞くほど奥へ奥へと広がる世界にのめり込んだ。
主な研究テーマは、再生可能エネルギーや分散型電源と在来システムとの共生だ。新しい電源が導入され始めた頃は、悪影響をいかに緩和して在来システムに取り込むかが課題だった。今は共生の在り方が変化し、再生可能エネルギーや分散型電源を上手に活用しようという前向きな流れになった。
風力の周波数制御機能や太陽光の電圧調整機能に着目
世界を見渡すと、集合化した風力が既存の電源を代替する働きをしており、エネルギー供給源の一つとしての役割が期待される。さらに、小回りの利く分散型電源の特徴を生かせれば、電力システムのオペレーションの助けにもなる。辻准教授は風力の周波数制御機能や太陽光の電圧調整機能などに着目し、研究に取り組んでいる。
電力システムの研究は世界的に「旬」のテーマで、海外留学生も多い。大学自身が積極的に受け入れているということもあり、研究室の学生約20人の約半数が海外留学生だ。中には海外の電力・ガス会社の社員もいる。関心のあるテーマは農村電化から長距離大容量送電まで幅広い。辻准教授は、国境や立場の違いを超えて学生同士が情報交換することを「とてもいい刺激になる」と評価。国際交流を今後さらに進めたいと話す。
電気新聞2018年4月2日
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