ライセンス制で需要

 
 三菱電機は、経済性とレジリエンス(強靱性)を両立させるマイクログリッドの設計技術を開発した。配電事業ライセンス制の開始を受け、マイクログリッドに関心を寄せる自治体や事業者に提案する。非常時に電力を供給する施設の優先順位、予算に応じて、配電線や電源などの設備投資を最小限に抑える。ブラックスタートを円滑に行える設計も特徴だ。再生可能エネルギーの地産地消ニーズにも応える。(匂坂圭佑)

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 配電事業ライセンス制は2022年4月に始まった。自治体や不動産デベロッパー、地域新電力などが関心を寄せているとみられる。三菱電機は24年頃に各社の事業化が本格化すると想定し、提案活動を行う。

 マイクログリッドは電力会社からの供給が途絶えた場合、地域内の電源で供給し続けるレジリエンス対策のニーズが見込まれる。その際、病院や行政などの重要施設に優先して送るか、全需要家に最大限供給するかなど、目的によってコストや設備構成が変わってくる。何日分の供給力が必要かも設計を大きく左右する。

 三菱電機は電力需給や系統運用のシミュレーション技術を活用し、初期費用、設備維持費用を最小化する。電力ICTソリューション「ブレンダー」に機能を搭載して提供する。

 電源を増設しても系統内の電圧や電流が適正範囲を超えないように設計。電源や蓄電池の適切な容量、設置場所のほか、配電線の増強や変圧器の設置など、膨大な選択肢から最適解を導く。外部からの電力調達コストを分析し、平常時にも域内の電源を積極的に利用することで、設備投資の回収期間短縮にも貢献する。

 ブラックスタート運転に対応できるのも他社との差別化要素だ。停電から復帰するには変圧器に大電流を送って起動させる必要があるが、電源の容量が足りないと成功しない。電源の出力を上げれば解決できるものの、コスト増となる。そこで、開閉器を増やして一度に起動させる変圧器の数を減らし、安価に済ませる。

電気新聞2023年3月1日