電力中央研究所は2024年度までに、送電設備が野生動植物に与える影響と対応策をまとめたデータベースの構築を目指す。再生可能エネルギーの導入拡大に伴う送電網増強や高経年化設備の更新需要を見据え、国内外の事例を整理。動植物に対する送電設備の影響と電力会社が講じる配慮策を体系的にまとめることで、環境配慮策検討の効率化に貢献する考え。

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 電力各社は建設地域の特性に合わせて国や自治体などと協議し、各種法律や条例に適合するよう野生動植物に対する配慮策を講じた上で送電鉄塔などを建設している。事例調査など事務作業に時間を要することから、これらの設備影響と対応策を整理したデータベースの整備が求められていた。

 今回、電中研は文献調査として、約150の学術論文や書籍、ニュース記事などに記載されている国内外の事例を整理した。事例整理に当たり、送電設備による影響を「建設時の影響」「鉄塔・電線による影響」「電線下の植生管理による影響」――の3つに分類。例えば「建設時の影響」では、工事による土地改変によって動植物の生息・生育地の一部が消失する事例に対して、計画段階で影響の少ない建設地点を選定したり、工事区域を縮小したりするなど国内外で講じられている対応策をまとめた。

 ただ、実用化にはさらなる事例蓄積が必要だという。電中研サステナブルシステム研究本部の小林聡主任研究員はデータベースの詳細は検討中とした上で、「特に配慮が求められる希少動植物への影響・対応策や、他事業による山間地での事例などニーズの高い情報を提供していきたい」と強調。今後も国内の送電設備に関連する事例調査を進める方針だ。

電気新聞2023年3月7日