改正省エネ法と建築物省エネ法で

 
 省エネ法と建築物省エネ法で、電気の価値の評価に関し、4月から整合が取れなくなる事態に陥る。4月1日に施行される改正省エネ法では、電気の1次エネルギー換算係数が見直されたが、建築物省エネ法には反映されないためだ。建物利用者からみると、建築時と運用時で電気の評価が異なるため、混乱が生じる可能性がある。建築物省エネ法を所管する国土交通省は、2025年度までは現行の評価を維持する方針だが、早急に見直しの議論が必要だ。(編集委員・浜義人)

 電気の使用について、現行の省エネ法では火力発電所から全量供給されたと評価しているが、改正省エネ法では電源構成の実態に基づき、非化石電源も含めた全電源平均での評価に見直した。具体的には、換算係数が現行の1キロワット時当たり9760キロジュールから、同8640キロジュールに低下する。

 一方、国交省は建築物の省エネ基準の適合義務化を進めている。22年6月の法改正により、これまで努力義務だった小規模住宅・非住宅を含め、25年度からは全ての新築住宅・非住宅が適合義務の対象になる。

 建築物省エネ法における電気の換算係数は、同9760キロジュールに据え置く。1月25日の社会資本整備審議会(国交相の諮問機関)建築物エネルギー消費性能基準等小委員会の会合で、事務局が25年度の義務化に向けて現行の換算係数を維持することを提案し、了承された。

 国交省は、適合義務の対象範囲拡大で影響を受ける中小工務店などに配慮し、さらなる負担となる換算係数の変更を見送ったとみられる。

 ただ、建築物省エネ法では、エネルギーについて「省エネ法で規定するエネルギー」と定義しており、両法で電気の価値が異なるのは理屈に合わない。このままでは、建築物省エネ法では相対的に、電気の価値が低くなる。

 また、省エネ法の換算係数は約3年ごとに見直すため、再生可能エネルギーの導入拡大や原子力の再稼働によって低下していくことが見込まれる。だが、建築物省エネ法の換算係数が据え置かれると、差が広がり、見直した際に大きく低下することになり、関係者に混乱を与えることも予想される。

 国交省は、建築物の省エネ対策を2段階で進める。適合義務の対象範囲拡大が第1段階で、第2段階では30年までに省エネ基準をZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)基準やZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)基準などまで引き上げる。

 第2段階に向け、国交省は換算係数の変更を検討する見込みだが、議論のスケジュールは立っていない。26年度以降、早期に変更するためにも早急な検討開始が求められる。

電気新聞2023年2月17日