今年度通期で4730億円の見通し

 
 燃料価格の高騰により、電力10社が燃料費調整制度で、電気料金に転嫁できる上限を突破した分の負担額が積み上がっている。2022年度第3四半期(4~12月)では10社計で約2367億円、22年度通期では計約4730億円に達するもよう。規制料金値上げを申請した7社は、基準燃料価格を大幅に引き上げ、適用後は新たな負担は生じない。一方、申請していない中部、関西、九州の3社は、燃料価格が高止まりすると負担が続く。(編集委員・浜義人)

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 ロシアのウクライナ侵攻後、世界的なエネルギー需給環境の不安定化を受け、燃料価格は大きく上昇した。豪州炭スポット価格は22年9月6日、過去最高の1トン当たり468.13ドルを記録。アジア向けスポットLNG価格「JKM」も22年3月7日、過去最高の同4386.43ドルを付けた。
 

高水準が続く

 
 23年1月下旬時点では、豪州炭スポット価格は同300ドルを切り、JKMも同千ドルを下回ったが、ウクライナ危機前と比べると高い水準を保っている。

 21年秋以降の燃料価格の上昇に伴い、電力各社で燃調の上限突破が広がった。▽22年2月分から北陸▽3月分から関西、中国▽4月分から四国、沖縄▽6月分から東北▽7月分から九州▽8月分から北海道▽9月分から東京▽10月分から中部――が上限を超え、現在も継続している。

 10社のうち、第3四半期で負担額が最も多いのが東北で、東京、関西、四国と続く。通期見通しでは東京が最も多く、次いで関西、東北、四国となっている。

 四国は10社の中で唯一、特別高圧から低圧まで全分野に上限を設定していたが、燃料高騰を受けて特高、高圧、一部の低圧自由料金の上限を撤廃。さらに、23年5月からは自由料金のうち上限が残っている低圧プランについても上限を廃止し、自由料金は全ての料金プランが上限廃止の対象になる。

 規制料金値上げを申請した7社は、基準燃料価格を引き上げ、1キロリットル当たり7万9300円~9万4200円に設定。一方、申請していない3社は、中部が同4万5900円、関西が同2万7100円、九州が同2万7400円としている現行の基準燃料価格が据え置かれる。
 

4月分以降も

 
 3月分の平均燃料価格は2月分から下がっているが、中部は同9万4300円、関西は同9万1千円、九州は8万7千円だった。一方、転嫁できる上限額は、中部が6万8900円、関西が4万700円、九州が4万1100円のため、4月分以降も負担額が積み上がっていくとみられる。

電気新聞2023年2月13日