省エネルギーやエネルギーミックスの大切さを子どもたちが実体験として学べる教育ツールが開発された。手回し発電機を使って盤上に並んだ豆電球をともすという“伝統的”な手法だが、再生可能エネルギーの出力変化に振り回される火力発電の立場を疑似体験できるなど、新しいアイデアがいくつも取り入れられている。
考案したのは、日本理科教育支援センターの小森栄治代表。埼玉県内の公立中学校を早期退職し、10年前に理科教育コンサルタントとして独立した。理科の楽しさを伝える指導法に定評がある。
この教育ツールは約3年前から教育現場で使い始めた。子どもたちが電気を届ける側の視点に立って、省エネやエネミックスの大切さを自発的に考えられるよう、豆電球を差し込む基盤と手回し発電機の使い方をひとひねり。自身が顧問を務める理科実験器具販売のナリカから、4月に商品化される予定だ。
アイデアの一つは盤上にかぶせるシートだ。住宅内部のイラストが描かれており、豆電球一つ一つを家電製品に見立てている。豆電球をLEDに交換すると、発電機を回す手にかかる負担が軽くなり、省エネ家電に買い替えるメリットを身をもって知ることができる。
このシートは「着せ替え」ができるのが特徴。街が描かれたシートをかぶせれば、豆電球の役割は住宅や工場に変わる。複数の盤をつなげると、1台の手回し発電機では対応できず、発電所の重要性を実感できる。
もう一つの工夫は、盤に埋め込まれた電圧計だ。手回し発電機を2人で1台ずつ持ち、電圧を一定に保てるように息を合わせて発電するという使い方をする。片方の発電機を回すスピードを急に変化させると、もう一方が対応するのは大変だ。
これは、天候次第で出力が大きく変わる再生可能エネルギーと火力発電の関係を表している。蓄電池に見立てたコンデンサーを盤に取り付けると電圧が比較的安定することも体験できる。
小森代表は「将来のエネルギーをどう考えればいいのかという問題の正解は、一つではない。子どもたちと対話をしながら、自発的に考えてもらうことが大切だ」と話す。
電気新聞2018年3月12日
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