東京電力パワーグリッド(PG)は、2030年度をめどに配電工事会社の電工作業員を多能化する。高経年化した電柱建て替え工事が今後急増するため。特殊なスキルがなくても扱える建柱車の開発・導入を進め、建て替え本数の約半分は電工作業員だけで作業を完結できるようにする。建柱作業員は残り約半分に振り向け、限られた要員で多くの工事をこなせる体制を構築する。

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 工事会社の作業員数は減少傾向にある一方、工事量は今後増える。来年度スタートするレベニューキャップ制度の下で、高経年化対策を強化する必要があるためだ。

 課題は電柱の建て替え工事。年間建て替え本数は現在1万本程度だが、30年度には1万8千本程度に増える見通し。電柱を元の位置に建て替えるニーズも増えており、工事の生産性向上が喫緊の課題となっている。

 東電PGは30年度に目指す姿として、電工作業員の多能化を掲げた。既に導入を進めている「電柱元位置建替車両」と、今回開発した「次世代建柱車両」を活用し、電工作業員が元位置建て替え工事を一気通貫で担えるようにする。建柱作業員はそれ以外の約9千本の電柱建て替え工事を担当し、工事量の急増に対応する。

 元位置建替車両は、東北電力ネットワーク、ユアテックと共同開発した。車両に伸縮式の鋼管ユニットを搭載。仮柱を建・抜柱する必要がなく、作業日数は従来の5日間から1日に短縮する。現在は70台を配備済みで、26年度までに190台体制にする計画だ。

 次世代建柱車両は、もう一段の生産性向上につながる。工事は電工作業員と建柱作業員の分業制のため、お互いの作業中に待ち時間が発生する。そこで東電PGは、電工作業員が操作できる建柱車の研究開発を16年度から主導してきた。

 新車両は多関節アームの先端に取り付けた「グラップル」で電柱をつかみ、建・抜柱作業を行う。建柱作業の専門知識がなくてもリモコンによる遠隔操作が可能だ。

 元位置建替車両に次世代建柱車両を組み合わせれば電工作業員4人で工事が完了し、建柱作業員3人を別の電柱建て替え工事に振り向けられる。東電PGは現在3台の次世代建柱車両を保有し、工事会社で作業性を検証中。3年後までの現場投入を目指す。

電気新聞2023年2月14日