経済産業省は、電気保安に携わる人材を中長期にわたって確保するための方針をまとめた。委託事業として行った実態調査によると、第3種電気主任技術者は、2045年に想定需要に対して4千人、電気工事士は1種が20年前半に同2万人、2種が45年に同3千人程度不足することが分かった。ただ、有資格者自体は一定量を確保できる見通しで、今後は業界の認知度を高めるとともに、実務経験のない有資格者を活用できるような仕組みづくりに、民間とも協力しながら取り組んでいく考えだ。

 電気保安人材の包括的な実態調査は今回が初めて。16~17年にかけ、経産省の委託事業としてデロイトトーマツコンサルティングが有資格者の推移をヒアリングや人口動態などを基に割り出し、将来需要を、独自モデルを使って推計した。主に電気主任技術者(2種、3種)と電気工事士が対象で、アンケート調査では約3700件の回答が寄せられた。

 電気主任技術者の有資格者は想定需要に対し、中長期的にも十分に確保できる見通し。ただ、業務ビルの増加と人材の供給減少に伴い、外部委託を担う保安業界の3種が45年に想定需要の約1万8千人に対し、4千人程度不足。45年にかけて大規模な再生可能エネルギー設備が増加するため、選任が必要な2種も地域によっては担い手不足に陥る可能性があるとまとめた。

 また、電気工事士は高齢者層の退職が影響し、1種は20年前半の想定需要20万4千人に対し、認定電気工事従事者によって一定程度補完されるものの、2万人程度が不足する見込み。2種も45年の長期では同8万6千人に対し、3千人が不足すると見積もった。

 いずれも、課題としては保安・工事業界に対する認知度不足を指摘する。特に電気主任技術者に関しては、養成する認定校が減少し、入職率も低下。実務経験が不足する有資格者が採用されにくいという実態もある。

 電気工事士も供給源となる工業高校・養成施設が減り、これらの機関からの入職率は15%程度にとどまる。他産業に比べ、離職率が20~40%と高いことも課題の一つだ。

 経産省では認知度向上に向け、関係団体との連携を強化するとともに、「有資格者が採用されやすい仕組みづくりが必要になる」とし、電気主任技術者としての実務経験に乏しい人材も、積極的に採用・育成できるよう制度的なインセンティブを設ける方向で検討を進める。認定校などの減少には、通信教育・オンラインによる資格取得制度の創設などで対応する考えだ。

電気新聞2018年3月14日