沖電気工業(OKI)は、外部電源と配線が不要なIoTセンサーを使った遠隔監視システムについて、電力インフラへの適用を目指し実証を進めている。様々な場所へ容易に設置可能なこのシステムを導入することで、巡視点検などを効率化できる。既に一般送配電事業者と複数の実証を終え、鉄塔の監視などで効果を確認した。水力発電所の水位、送電線の落雪監視といった用途も想定する。まずは2023年中にも初の商用案件を獲得したい考えだ。(矢部八千穂)

高感度カメラ付きのIoTセンサー

 遠隔監視システムはIoTセンサー「ゼロエナジーゲートウェイ」シリーズに加え、傾斜角や固有振動数、加速度などを計測できる子機で構成する。独自の省電力無線技術により機器同士が連携するため、センサー1台が携帯電話回線に接続していればクラウドへの情報送信が可能。オンラインで対象全体を常時監視できる。

 IoTセンサーは太陽光で駆動し、日照がなくても連続9日間まで動作する。電源と配線も不要なため、山奥や斜面、橋脚など人が行きづらい場所にも低コストで遠隔監視システムを構築できる。昼夜問わずに鮮明な画像の撮影が可能なカメラ付きの製品、水圧式・超音波式の水位計が付いた製品もある。
 

自治体や鉄道などで実績

 
 社会インフラの老朽化や自然災害の増加に伴い、保全効率化や状態把握の迅速化が求められていることを踏まえ、遠隔監視システムを開発した。既に多くの自治体や鉄道、道路などの事業者で導入実績があり、河川や橋、道路横の斜面監視などに活用されている。

 一般送配電事業者が抱える電力インフラも適用先として想定している。3年ほど前から実証に乗り出しており、これまでに5件程度実施した。

 実証では鉄塔のゆがみに伴う傾きの変化、ボルトの緩みによる健全度の低下といった事象を監視。傾斜角や加速度、固有振動数の計測データを基に、これらの事象を把握できることを確認した。

地滑り監視の実証で設置したカメラ付きIoTセンサー

 加えて、鉄塔が建つ斜面の地滑り監視に適用できることも確かめた。IoTプラットフォーム事業部スマートコミュニケーションシステム部の橋爪洋担当課長は、「(遠隔監視システムの)効果は確認できている」として、電力インフラへの適用に自信をみせる。
 

水位監視などBCP活用も

 
 一般送配電事業者からは、水力発電所の水位や送電線の落雪のほか、BCP(事業継続計画)としての事務所周辺の水位監視にも活用できないかとの要望が寄せられているという。緊急輸送道路の電柱などにシステムを設置し、災害時に道路が利用できるか迅速に確認したいといった声もある。

 同社は今後も一般送配電事業者と実証を積み重ね、こうした要望にも対応していきたい考えだ。橋爪課長は、広いエリアに膨大なインフラを持つ一般送配電事業者も、自治体などと同様に老朽化や災害対策に悩んでいると指摘。期待も寄せられているとして、「早期に応えられるよう取り組みを進めたい」と意気込みを語る。

電気新聞2023年1月20日