三菱電機は4月、工場などに導入した再生可能エネルギーを複数拠点で融通するクラウド型ソリューションの提供を始める。再エネ由来電気の自家消費や他拠点への自己託送を最適に運用。非化石証書など環境価値の価格に応じて購入計画を立案し、電力調達コストを最小化する。条件が異なる各拠点の脱炭素化を後押しするものだ。自己託送制度を使って再エネを有効活用するサービスは、メーカー各社が相次いで投入している。

 三菱電機は2022年4月に、各拠点の再エネと蓄電池の運用や、証書の購入計画を自動で立案する「マルチリージョン型デジタル電力最適化技術」を開発。同社のソフトウエア製品「ブレンダー」で提供している再エネ発電量と需要の予測、発電計画の作成・提出といった機能と統合して新サービスを提供する。同社工場に導入してサービスを検証してきた。

漆間啓・三菱電機社長

 再エネの設置スペースが不足する工場や、再エネ供給量が施設の需要を上回る場合に、拠点間で電力を融通して再エネを最大限活用できるようにする。電力の環境価値を30分単位で算出し、運用計画を策定。蓄電池の充電量を再エネ由来と非再エネ由来に分けることで、環境価値を正確に管理する。

 漆間啓社長が電気新聞の取材で計画を示した。同社が21年に買収した英スマーターグリッドソリューションズ(SGS)を挙げながら、「SGSの技術をうまく活用して、分散電源の最適制御分野に取り組みたい」と事業拡大に意欲を示している。

 自己託送制度を活用したエネルギーマネジメントサービスを巡っては、日立製作所も22年に提案を開始した。事業所間で太陽光発電を融通する仕組みを構築する。NECもクラウドによる自己託送支援サービスを4月に始める。企業のカーボンニュートラル計画を拠点ごとにきめ細かく支援するサービスが活発化してきた。

電気新聞2023年1月18日