常設作業帯は電線共同溝方式より工事期間が長くなる(写真は埋め戻し方式)
常設作業帯は電線共同溝方式より工事期間が長くなる(写真は埋め戻し方式)

 京都市が直接埋設方式による無電柱化の実証実験を行っている。U字溝や鉄板などを使わず、実道でケーブルを“直埋め”するのは初のケースだ。埋設工事は完了しており、現在は通信線の傷み具合や道路舗装表面の状況など経過を観察している。同市は「直接埋設の将来的な実用化に向けた一助となれば」と期待を寄せる一方、交通に与える影響や基準の整備といった課題もみえてきた。実証は3月16日まで行う予定。

 直接埋設方式は歩道がない道路や、歩道があっても幅員が狭い道路など電線共同溝方式での整備が難しい箇所でも適用できる可能性がある。掘削面積も抑えられ、コスト削減の手法の一つとして、無電柱化を推進したい国土交通省が有望視している。
 

京都市の東一条通で通信線を埋設。施工に問題はないが交通に影響

 
 同市は国交省道路局が2017年5月に公募した「道路に関する新たな取り組みの現地実証実験(社会実験)」に応募し採択。同市や電線管理者、有識者などで構成する「京都市『直接埋設方式による電線地中化』検討協議会」を設立するなど実証に向けた調整を進めてきた。

 実施区間である東一条通(左京区)では、昨年11月から12月にかけて通信線の敷設工事を実施。東一条通は大半が京都大学の敷地に接する。電力・通信の需要変動が小さく、大型車の交通量も少ないことから実施区間に選定された。路面から埋設物上面までの深さは約40センチメートル。防護材には砂とEPS(特殊発泡スチロール)を使用する区間をそれぞれ設けた。

 京都市建設局道路建設部道路環境整備課の岩村謙次・事業促進担当課長は敷設工事について、施工方法や安全性に問題はなかったものの「常設作業帯の設置が交通に与える影響が大きいことを実感した」と振り返る。

 電線共同溝方式であれば少しずつ管路を設置して埋め戻し、最後にケーブルを通すことができるため常設作業帯は限られる。一方、直接埋設はケーブルを埋めるための溝を作り終わるまで、常設作業帯を全区間に設けなければならない。その結果、実施区間の約90メートルが5日間にわたり閉鎖された。

 岩村課長は、直埋めの直接埋設が仮に実用化されても町中や狭い道路では「そのような期間、(道路を)規制し続ける工事は厳しい」と指摘する。常設作業帯のコンパクト化は今後の課題となりそうだ。
 

電力線の直埋めにはトラフが必要。調査では共同溝の方がコスト安に

 
 今回の実証で電力線は埋設されていない。経済産業省の「電気設備の技術基準」では、実道での電力線の直埋めは要件を定めており、コンクリートなどのトラフを敷設し、その中にケーブルを収納する必要がある。

 同市は当初、電力線を直埋めして通電することを検討したが、電線管理者から同基準に違反するとの指摘を受けたため、電力線は埋め戻す前に撤去した。岩村課長は「直接埋設の基準も整備してほしい」と訴えるが、「今のところ(同基準を)改正する予定はない」(経産省)ようだ。

 直接埋設が電線共同溝方式よりもコストを低減できるかについても不透明だ。資源エネルギー庁などが行った16年度の「直接埋設による電線地中化工法の実用性調査」によると、施工コストは電線共同溝方式と比べ、5%程度上昇したと報告されている。

 長期的なメンテナンスを考えると「電線共同溝方式の方が手間もかからず、結局安くつくのでは」(ケーブル業界関係者)といった声もある。

電気新聞2018年2月22日