電力広域的運営推進機関(広域機関)は2月14日の有識者委員会で、全国の基幹送電線の最大利用率を年間の最大潮流実績に基づいて調べた結果、空き容量ゼロの送電線では実際に約8割以上の高い最大利用率になったという評価を示した。一方、京都大学は空き容量ゼロの基幹送電線の利用率を年間平均の潮流実績に基づいて調べ、2割強の低率にとどまると評価している。これに対し、広域機関は「空き容量は年間平均の利用率では適正な評価ができない。最大潮流に基づく最大利用率での評価が適切だ」と指摘した。

 今回、広域機関は全国10エリアの419の基幹送電線を対象に、2016年9月から17年8月末までの1年間の最大利用率の実績を調査した。空き容量がゼロと算定された送電線は32本あったが、実際に電気を流せる容量(運用容量)に対する年間最大潮流の割合を示した「最大利用率」は、最も低い関西でも平均78.2%、中部で79.3%となった。北海道と東京、中国、九州の4社は8~9割の範囲になり、東北と北陸の2社は100%を超えた。100%を超えたのは、潮流改善のための作業が遅れて一時的に運用容量を超過したことなどが理由。四国と沖縄は空き容量ゼロの送電線がなかった。

 また、上位電圧の系統に空き容量がないため、空き容量ゼロと算定された基幹送電線も加えると146本あった。この最大利用率は四国と沖縄を除く8エリアで50%強から120%の範囲になった。

 送電線の空き容量は運用容量の枠内で算定する。現状は、連系済みと連系を予約している電源全ての最大潮流を想定し、まだ流せる容量があれば空き容量が存在し、なければ空き容量はゼロと評価する。

 年間平均の潮流実績を基に空き容量を算定して新規電源の連系を認めていくと、もともと連系している電源が最大出力で発電した場合に運用容量を超えて、落雷時などに停電になる恐れも高まる。広域機関の事務局は、評価結果を示した14日の広域系統整備委員会(委員長=古城誠・上智大学教授)で「空き容量は年間平均の潮流ではなく、最大潮流で評価することが適切だ」と話した。

 一方で、広域機関は現状の潮流想定方法を電源の稼働実態を反映した方法に4月から変更し、送電線の空き容量を増やす。さらに、既設送電線を有効活用して電源の連系量を増やす「コネクト&マネージ」の検討を進めていく考えだ。

電気新聞2018年2月15日