風を船の推進力とすることで燃料消費を抑えられる装置を搭載した石炭輸送船が15日、東北電力の能代火力発電所(秋田県能代市)に初入港した。オーストラリアやインドネシア、北米などから発電所に石炭を運ぶ同社専用船で、繊維強化プラスチック(FRP)製の大型帆を世界で初めて採用している。今回が同社の発電所向けに石炭を届ける初航海だった。
輸送船「松風丸」の入港は同日、報道関係者に公開された。能代火力の清野幸典所長は報道陣に「脱炭素に向けた新技術を導入して効率的に発電所を運用することが重要」と強調。石炭輸送の要として安定的な燃料調達に寄与することに期待を示した。
松風丸は長崎県で建造された。10月7日に同県を出航し、16日間で豪ニューキャッスルに到着。8万8千トンの石炭を積載して能代火力に入港した。
松風丸は全長約235メートル、載貨重量10万422トンで、東北電力と商船三井が建造した。硬翼帆式風力装置「ウインドチャレンジャー」を搭載し、燃料である重油の使用量を抑制。環境負荷の低減と経済性の向上を実現する。同型の船と比べて燃料消費を日本―北米間で年間8%以上、日豪間で同5%以上減らせる。
ウインドチャレンジャーは高さ約23~53メートル、幅約15メートル。帆の素材には、強度を確保しながら軽量にするためFRPを採用した。商船に積載する貨物量に影響が出ないよう軽量化が必要だったという。
航海中は風向きや風速を検知して、帆の角度や高さを自動制御する。帆の高さは、港湾の桟橋の高さに合わせて4段階で調節できる。帆は弱風時に伸ばし、強風時に縮められるようにした。
電気新聞2022年11月16日
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