九州電力が開発するポータブル電源。車輪もあって移動させやすい

 九州電力は、中古のリチウムイオン蓄電池を再利用した電源装置の製造・販売を2023年度にも始める。電動の建機や電気自動車(EV)などに搭載された中古電池を無償で引き取り、移動式のポータブル電源に転用して安価に売り出す。九州電力独自の電池の監視・制御技術で製品化を実現した。製品は工事現場用の電源や災害時の非常用電源として役立つと訴求する。中古電池を抱える企業側も処分費を削減できる。蓄電池の再利用の在り方に、九州電力が一石を投じる。

 ポータブル電源は容量3.28キロワット時と9.84キロワット時の2種類を販売する予定。製品には車輪も付け、非常時などに移動させやすくした。寿命は電池の状態によるが、おおむね8年程使い続けられるという。価格は未定だが、100万~200万円程度を目指す。31年度には年間1200台を売り上げたい考えだ。

 製造に必要な中古電池の確保先は、国内だけでなく海外企業も含めて検討する。また、4月に開始した産業用機械向けの電池パックの販売とも連動させる。九州電力は建設機械など向けに販売した電池パックを新品に交換する際、古くなった電池を無償で回収して有効活用する方針だ。

 中古電池は劣化の度合いに差があり、再利用にはハードルがあるとされる。九州電力は長年蓄電池の研究に取り組んでおり、電池の監視・制御技術を強みとする。製品では中古電池の残存容量を正確に計測した上で、性能のばらつきを一定にして制御する知見が役立っている。

 製造はグループ企業や九州の地場企業への委託を検討する。現在は市場投入に向けて、開発中の製品を建設会社やコンビニなどに貸与してニーズや耐久性などを調査中。工事現場では排気ガスが出る自家発電機よりも環境性に優れ、カーボンニュートラルの実現に貢献できる。コンビニでは災害で停電すると電子決済が使えなくなる恐れがあるため、非常用電源として製品が役立つとの期待がある。

 九州電力は産業用機械向け電池パックと、ポータブル電源装置の製造・販売を蓄電池事業の2本柱としたい考え。31年度には蓄電池事業の売上高を300億円程度とする目標だ。

 蓄電池は普及が進み、使用後の取り扱いも課題になる。産業廃棄物とすれば処分費がかさむ。中古電池からレアメタルを取り出すリサイクルの動きも出ているが「コスト面の課題を解消するには時間がかかる」(業界関係者)との見方もある。九州電力の取り組みは、貴重なレアメタル資源を有効に活用する上でも重要といえそうだ。

電気新聞2022年11月15日