期ずれ影響除けば7社が経常黒字

 
 燃料費調整の期ずれ影響が電力各社の業績の“見え方”に大きく作用している。四国、沖縄を除く大手電力8社の2022年度中間連結決算で、期ずれ影響を除いた実力ベースの経常損益は、東京を除く7社が黒字を確保し、このうち3社は増益。期ずれ影響を加えた経常損益では8社とも赤字だった。燃料費調整制度の上限超過によって転嫁できない負担分は、中間期では10社計で約700億円に上り、通期では東京、九州を除く8社で計3千億円を超える見通しだ。

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 燃料価格と卸電力市場価格の高騰や円安進行で苦しい経営を迫られる中、経営効率化努力などにより、北海道、東北、中部、北陸、関西、中国、九州は期ずれ影響除きで経常利益を確保。このうち北海道、中部、中国は増益だった。

 東京は、東京電力エナジーパートナー(EP)の損失が大きいことから、期ずれ影響除きの経常損益は前年同期の1463億円の黒字から、今期は568億円の赤字に転落した。

 期ずれ影響除きの経常利益が最も多かった中部は、JERAの利益増が大きく影響したほか、中部電力ミライズによる相対取引に関する電源調達コストの削減などが利益を押し上げた。中国は、期ずれ影響を含む経常損益では過去最大の赤字幅を記録したが、期ずれ影響を除くと他社販売増などで5割近い増益になった。

 一方、燃調の上限超過による負担分は各社で積み上がっている。燃料価格高騰に伴う供給コストの増分を、電気料金で回収できない状況が続いている。まず北陸が2月分から上限を超え、3月分から関西、中国、4月分から四国、沖縄、6月分から東北、7月分から九州、8月分から北海道、9月分から東京、10月分から中部が突破した。

 沖縄の場合、第1四半期(4~6月)の負担額は6億円だったが、7~9月は102億円に急増。10月から23年3月までの半年間では353億円まで拡大すると予想する。同社は「電力供給に必要なコストが電気料金収入を上回る異常な状況が続いている」とし、23年4月の料金値上げに向けた検討を始めた。

 中間期までの10社計の負担分は691億円に達しており、通期では通期見通しを公表していない東京、九州を除く8社で計3221億円に膨らむ見込み。電力関係者は「負担額が経営を圧迫しているのは事実。安定供給を維持していくため(上限を)外してほしい」と訴える。

電気新聞2022年11月9日