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燃料高に円安、にじむ苦境

 
 大手電力10社の2022年度中間連結決算が1日までに出そろい、四国を除く9社が経常損益、純損益とも赤字になった。燃料価格と卸電力市場価格の高騰や円安進行が各社の経営を圧迫しており、厳しい通期見通しの公表や下方修正、電気料金値上げの表明が相次いだ。下期にかけても燃料価格の高止まりなどは続く見通しで、通期見通しを公表していない東京、九州を除く8社は全社が経常赤字、最終赤字を見込んでいる。

 売上高は、燃料費調整額の増加などが寄与し、全社が大幅に増加。10社計でも5割近い増収となった。一方、利益面では燃料価格高騰による火力燃料費の増加などが大きく響いた。

 中間期では、中国が経常、最終とも過去最大の赤字となり、東京、北陸は過去最大の経常赤字、中部は過去最大の最終赤字を計上。東北は、連結決算を開始した00年度以降で経常と最終の赤字幅が最大となり、沖縄は同年度以降で初めて経常、最終とも赤字に転落した。

 通期予想を公表した中部、北陸は、経常、最終とも過去最大の赤字幅となる見通し。四国は、前年同期は停止していた伊方発電所3号機の安定稼働や、従来よりも踏み込んだ効率化対策によって、中間期では経常、最終とも黒字を確保した。だが、通期ではいずれも12年度に次ぐ過去2番目の赤字幅を見込んだ。

 関西と沖縄は通期見通しを下方修正。関西は4月の前回公表時から経常赤字が1千億円、最終赤字が700億円それぞれ悪化する。

 小売販売電力量は、北海道、東京、関西、四国、沖縄が増え、東北、中部、北陸、中国、九州が減るまだら模様だった。12年ぶりに増加した北海道は、特別高圧・高圧分野の戻り需要が押し上げた。関西は新電力の値上げや撤退などを受け、電灯・電力のうち電力が2割近く増えた。

 厳しい経営状況を受け、決算発表に合わせて料金値上げを表明するケースが相次いだ。東北、東京、北陸、中国、四国、沖縄は規制料金の値上げを表明。値上げ時期は来春以降になる見込みで、四国は原子力が稼働している中での値上げになる。

 東京電力ホールディングス(HD)の山口裕之副社長は、値上げについて「東京電力エナジーパートナー(EP)は、燃料・卸電力市場価格の高騰により、費用が収入を上回って財務基盤が急激に悪化している。福島への責任を果たすためには、強固な事業基盤が必要だ」と理解を求めた。

電気新聞2022年11月4日