電磁石で学びながら遮断機のしくみを理解できる科学教室のプログラム
電磁石で学びながら遮断機のしくみを理解できる科学教室のプログラム

 三菱電機が全国各地で取り組んでいる子ども向けの科学教室が、経済産業省の「第8回キャリア教育アワード」の「奨励賞」に選ばれた。この表彰は産業界の優れた教育支援活動をたたえるもの。三菱電機の科学教室は子どもの理科離れが叫ばれて久しい中で、科学の関心を育もうと2009年に開始。メーカーならではの教材が特長だ。科学教室の仕掛け人たちは、受賞を弾みにさらに活動を盛り上げたいと意欲を見せる。
 

プログラムは15テーマ以上。総合電機の技術を活用

 
 三菱電機の科学教室は、1990年代から一部拠点が独自に行っていたものが始まり。これを2009年に全社大の取り組みに発展させた。その狙いを黄檗満治総務部長は「総合電機メーカーとして様々な技術を蓄積している。それを活用して科学への関心を育みたい」と話す。「教科書だけでは分かりづらいことも、実用化した技術を取り上げているので楽しく体験して興味を持ってほしい」。

 科学教室は自社の事業所や支社で開催するほか、出前授業や地域のイベント参加といった柔軟な形で展開。2016年度は全国各地で79件開催して約6100人が参加した。

 15テーマ以上のプログラムを用意しており顧客の要望に応じて授業の中身を組み立てる。電気の基礎知識を楽しく学べるメーカーならではの内容だ。電圧や電流、磁界の関係を実験で分かりやすく伝えたり、モーターや家電に欠かせない電磁誘導の仕組みに興味を持つように説明したりする。
 

遮断機の仕組みを、吊り上げゲームで学ぶ

 
 中でも目を引くのが最新作だという遮断機の仕組みを学ぶプログラム。遮断機に欠かせない電磁石で遊んでもらいながら、電磁石の特徴や遮断機の役割を伝える内容だ。

 まずはコイルに流す電流やコイルの巻き数によって電磁石の吸引力が変わることを説明。その上で行うのがゲームだ。参加者が自作した電磁石で1分間にどれだけスズの重りをくっつけて吊り上げられるかを競う。ゲームで興味を引いた上で生活と遮断機の関わりを伝えていく。

 教材作成に当たった人材開発センターの細谷史郎・電子通信教室長兼理科教育推進グループマネージャーは「吊り上げるのがなかなか難しくて面白いと子どもたちには好評だった」と手応えを見せる。

 一方で教える側の三菱電機社員にも学べるものがある。細谷氏は「講師役は若手エンジニアが務めることが多い」と前置きし、出前授業に参加することで「プレゼンテーション能力が磨かれ、また自身の知識を再確認できる」と指摘する。細谷氏自身も「教材作成を始めて三菱電機の技術と生活との関わりをよく整理できた」と実感している。

 科学教室をはじめ三菱電機の社会貢献活動の取りまとめを行う総務部の田中康雄・社会貢献推進課長は「今後も教材を充実させたり開催場所や回数を増やしたりして、活動の幅や質を高めていきたい」と話す。

電気新聞2018年1月18日