四日市火力発電所構内で運転開始

 
 JERAとトヨタ自動車は27日、電動車の使用済み駆動用バッテリーを再利用した大規模蓄電システムを三重県四日市市に設置し、同日から運転を開始したと発表した。当面は負荷抵抗器へ充放電を行い、2022年度中に中部電力パワーグリッド(PG)の配電系統に接続する予定。パワーコンディショナー(PCS)を省いた蓄電技術の確立と、電動車の再利用バッテリーによる蓄電システムを電力系統に接続するのは、世界で初めてとなる。

 同システムは、JERA四日市火力発電所構内に設置。定格出力485キロワット、定格容量1260キロワット時で、電動車120台分の再利用バッテリー(リチウムイオン電池、ニッケル水素電池)で構成した。

 両社は18年から、電池の再利用技術確立に向けて共同で検討を重ねた。JERAはシステムの運用方針策定や電力システムへの影響評価、トヨタ自動車は制御システムの開発・運用などを担う。20年代半ばには同システムで、約10万キロワット時の電力供給を目指す。

 トヨタ自動車が開発した同システムは、スイープ機能を持つことが特徴となる。直列につないだ電池の通電と非通電を瞬時に切り替えて、充放電量を制御する。

 この機能を応用した蓄電池からの交流による直接出力や車載用インバーターの再利用によって、PCSの省略を実現した。蓄電システムでは一般的に、コストの半分をPCSが占めるため「大きなコストダウンが見込まれる」(JERA)という。

 さらに、電動車ごとにバッテリーの種類や性能、劣化状況などは異なるが、同システムではこれらを組み合わせても各バッテリーの容量を使い切ることができる。

 同システムの普及について、JERAは「再生可能エネルギーの導入拡大に寄与し、火力発電の調整力としても期待している」とコメントした。

電気新聞2022年10月28日