政府は2017年12月に開いた再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議で、水素社会の実現に向けた方向性を示す基本戦略を決定した。この水素基本戦略では、水素需要を飛躍的に増加させるため、発電利用を最重要分野として位置付けている。将来的に発電容量1500万~3千万キロワット時に相当する年間500万~1千万トン程度を調達。これによりLNG(液化天然ガス)火力と同等となる1キロワット時当たり12円程度まで発電コストを引き下げる考えを示している。

 水素基本戦略策定の背景にあるのは、日本のエネルギー需給を巡る構造的課題。日本は1次エネルギー供給の94%を海外化石燃料に依存。自動車は燃料の98%が石油系で、このうち、87%を中東からの輸入に頼っている。また、パリ協定の発効で、主要国では2050年に向けた野心的なビジョンが公表され始めた。こうした背景を踏まえ、2014年6月に策定した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を強化する。

 基本戦略では、ロードマップで需要の中心だった燃料電池車(FCV)や家庭用燃料電池「エネファーム」について、設置目標などを据え置いた。

 一方、新たに発電分野の目標を記載。再生可能エネルギーの導入拡大に必要な調整電源・バックアップ電源としての役割や、水素を大量消費するための手段として有益とした。国際的なサプライチェーンの構築とセットで進めるべき最重要分野として位置付け、具体的な目標も明記。2030年頃に商用化を実現し、1キロワット時当たり17円の発電コストを目指す。将来的にLNG火力と同等のコスト競争力にする。導入に当たっては、経済性の確立に向けた制度設計などの検討を進める。

 モビリティー利用に関しては2030年度までに燃料電池バス1200台、燃料電池フォークリフト1万台の導入目標を盛り込んだ。この他、トラックや小型船舶での水素利用技術開発も進める。

 水素供給側の取り組みとしては、褐炭や海外の再生可能エネを活用した水素製造などを想定する。福島県浪江町で進められている水素製造実証事業の成果も生かす。東京五輪・パラリンピックでは、福島県産の水素を利用する方針だ。

電気新聞2017年12月27日