マイクログリッドの商業化には「需要家間のエネルギー取引の活発化」と「蓄電池など構成設備費の低減」が鍵だとする報告書を、米国、日本など13カ国の関連団体が加盟する「国際スマートグリッド連合(GSGF)」(本部=ワシントン)がこのほどまとめた。簡易な決済技術であるブロックチェーンを需要家間の電力取引に適用して取引コストを下げたり、蓄電池や太陽光発電用パワーコンディショナー(PCS)などの構成設備を「ユニット化」して生産コストを下げることが有効とした。

 マイクログリッドは、分散型電源を軸にした小規模系統を地域で構築し、系統内の需要家が使うエネルギーの需給管理の最適化などを目指す仕組み。日本でも自営線を引いた実証実験などが行われているが、補助金事業が主で自立的に普及しているとはいえない。GSGFは報告書で、世界的にも設備費の高さや事業モデルの不透明性という課題があり、実証段階・補助金依存の状態にとどまっていると指摘した。

 GSGFは、欧州重電大手のABBが蓄電池やPCSなどのマイクログリッド構成設備をユニット化して販売することを例に挙げ、同様の方法で大量生産につなげてコストを下げることが早期の商業化に必要と指摘した。

 アグリゲーターを介した需要家間の電力取引は、決済を簡易にするブロックチェーンを使えば、従来型のシステムに比べて仲介費用など関連コストの低減につながると指摘。また、太陽光など分散型電源による電気の需給調整をマイクログリッドの中で完結させれば、配電設備の増強費も抑えられるとの見方を示した。送配電事業者が需給調整する場合は、電気を配電系統に逆潮流させる必要があるが、逆潮流の増加に伴う電圧上昇を抑えるため、設備増強が必要になる場面もある。

 同分野に詳しい海外電力調査会の岡田将司研究員は日本のマイクログリッドについて、明確な収益モデルが描かれないと「事業者の参入が進まない」と指摘する。ブロックチェーンを巡っても、小売電気事業者でない個人間の電力取引は電気事業法上難しく、法制面の整理が必要との認識を示す。また、電力の安定供給と品質確保の観点からも検証が求められるとし、具体的には大規模災害時の需給管理の課題などを挙げている。

電気新聞2017年11月29日