対話型の人工知能(AI)を組み込んだ「スマートスピーカー」が話題を呼んでいる。話し掛けるだけで家電を自動制御できる機能などが目新しいからだ。スマートスピーカーの登場でHEMS(家庭用エネルギー管理システム)の利用スタイルも変化する可能性が高い。HEMSの機能である電力使用量の確認や家電の操作は従来、スマートフォンで行っている。スマートスピーカーと組み合わせれば、話し掛けるだけで手軽に電力使用量の確認などができる。
アレクサに電気代を聞いてみた。そしてテレビを消してみた
横浜市住宅供給公社が地下鉄高島町駅近くに建設した新築分譲マンションでスマートスピーカーとHEMSが組み合わせられる可能性を体感した。室内の一角には米アマゾンのスマートスピーカー「アマゾンエコー」が置いてある。
「アレクサ、エネトークで今月の電気代をチェックして」と話し掛けると、「今月の電気代は○円で前月より○円高いです。参考までに使用量は○キロワット時ですね」と返してくれる。アレクサとはアマゾンエコーに組み込まれたAIのことだ。
使い過ぎだとわかれば省エネしたくなるのが心情。いちいちリモコンを手に取らずとも「アレクサ、テレビを消して」と声を掛ければアマゾンエコーに接続する赤外線リモコンが自動でテレビの電源を切る。
分電盤センサーで家電ごとの消費量を把握。赤外線リモコンで遠隔操作
電力使用量の確認機能は、ソフトバンクグループのエンコアードジャパン(東京都港区、中野明彦社長)が手掛けるエネルギー情報分析システム「エネトーク」と連携させることで実現した。エネトークは分電盤にセンサーを取り付けるだけで、どの家電がどれだけ電力を消費しているか独自の分析方式で高精度に導き出せるのが特徴だ。
エンコアードジャパン事業推進本部の須永康弘本部長は「テレビの見過ぎなど、電力使用量の解析結果から導いた生活面のアドバイスなどもアレクサが伝えられるようにしたい」と展望を話す
横浜市住宅供給公社は、この新築分譲マンションの全戸にアマゾンエコーとエネトークを配備。アマゾンエコーで家電を遠隔操作するための赤外線リモコンも設置した。
横浜市住宅供給公社の今村美幸マネージャーは「アマゾンエコーの全戸配備は日本初。ここで導入効果を確かめて、保有する老朽化した団地やマンションの価値を高めるために役立てたい」と話す。
HEMSを搭載して集合住宅の付加価値を高める取り組みは一般的だが、音楽やニュースなども流してくれるスマートスピーカーなら生活者を飽きさせない。家電メーカー各社が展開する従来のHEMSと比べて簡単に設置できるのも利点。スマートスピーカーの手軽さは新築住宅だけでなく、既築住宅への後付け導入を広げる可能性も秘めている。
スマートメーターのBルートを活用するサービスも
今後はスマートメーター(次世代電力量計)とスマートスピーカーの関わりも生まれそうだ。そうした中で、インターネットイニシアティブ(IIJ)は新たな可能性を模索する。
IIJはスマートメーターのデータをHEMSが取得する通信経路「Bルート」の利活用事業を展開する。昨年9月にはBルートから得た電力使用量データを目で確認できて、安価で簡単に設置できるHEMS端末「Cube J1」を発売。2018年中にも、この端末にスマートスピーカーとの連携機能を組み込むことを目指している。
同社ネットワーク本部の齋藤透・IoT基盤開発部長は「スマートスピーカーが住人とHEMSをつなげる接点になると考えている」と指摘。「何かあった時に声やメッセージで知らせてくれて、話し掛けるだけで簡単に指示できた方が使いやすい」との考えを示す。スマートスピーカーの登場が、HEMSの普及拡大を後押しするかもしれない。
電気新聞2018年1月12日