中国電力ネットワークは2023年度に、既存設備のままで送電容量を増やせる技術を導入する。送電線の地点ごとに気温や日照量、風況をリアルタイムで把握。送電線の温度を算出し、許容量まで流すことで送電容量を増やす取り組みだ。増量する分だけ再生可能エネルギーの電力を系統に流せるため、中国NWは「再エネの導入拡大に貢献できる」と意欲をみせている。

 12日に富士通と共同で行ったオンライン説明会で明らかにした。送電容量を増やすため、外気温などの変化に合わせて最適な容量を算出する「ダイナミックレーティング」と呼ばれる技術を使う。

 ダイナミックレーティングの導入効果は確認中だが、「海外では1回線の最大容量を4割ほど増やしたデータもある」(中国NW)という。実用化に至れば、鉄塔と送電線を新設しなくても送電容量を増やせそうだ。

 送電線に流せる上限値は太さと電圧に加え、気温や日照量、風速で決まる。気温が高く、流す量や日射量が多いと送電線は熱くなる。許容温度を超えると劣化するため、それより低い温度となるように運用している。

 夏季と冬季で送電容量を変えているが、気象データによって送電線の温度を推定できれば上限値近くまで送電容量を増やせる。気温と日射量は地域気象観測システム(アメダス)などの外部データを使えば送電線の地点ごとに推定できる。風況は山間地になるほど変化しやすいため、外部データを活用しにくい。

 そこで中国NWと富士通は、光ファイバーで振動を検知する富士通の技術を活用することにした。送電鉄塔に取り付けてある光ファイバーが風で揺れると、その振動データを変換して風況を把握するという取り組みだ。

 両社は島根県、広島県、山口県にある計3カ所の変電所に振動測定装置を設置。送電鉄塔の光ファイバーに接続し、21年9月から1年かけて実証した。数メートル間隔で送電線の振動データを千分の1秒刻みで取得。鉄塔に設置した風速計のデータと比較したところ、おおむね一致した。

 日射量や外気温も鉄塔に設置した各種センサーで取得。そこから送電線の温度を推定したところ、送電線の近くに設置したサーモグラフィーで計測した温度とほぼ同じだった。

 これらピンポイントの気象データを用いることで、流せる送電容量を正確に把握できる見通しを得た。中国NWは来年度、これらの技術を一部の送電線に導入する。その際は外部データを活用して気温や日射量を把握する。富士通は今後、送電線の振動データを変換する精度の向上に努める考えだ。

電気新聞2022年10月13日