岸田首相(右から2人目)と意見を交わす電力トップ(左から、小早川社長、池辺会長、樋口社長。10月12日=首相官邸ホームページより)

 岸田文雄首相は12日、電気事業連合会の池辺和弘会長、東北電力の樋口康二郎社長、東京電力ホールディングス(HD)の小早川智明社長を官邸に招き、電力業界の経営状況などについて意見を交わした。岸田首相は検討中の電気料金負担の激変緩和措置について、「(新電力を含む)全国700社の電力各社と協力し、既存の料金請求システムを活用しつつ、最大限に柔軟な対応が必要」と協力を求めた。

 会合は、電力業界が置かれた状況を聞き取ることが目的で、政府側は岸田首相のほか、西村康稔経済産業相、木原誠二官房副長官が出席。厳しい経営状況に直面している東北電力と、節電や省エネルギーを様々な工夫で展開している東電HDを招いた。

 岸田首相は、激変緩和措置や供給力確保への協力を要請。激変緩和措置では、「国からの巨額の支援金が、電力会社への補助金ではなく、全て国民の負担軽減に充てられることを明確に示す仕組みにしないといけない」と強調。支援策の透明性確保のため「電力各社はシステム対応を含めた激変緩和と新たな仕組みの整備に協力してほしい」と求めた。

 供給力確保では「電力供給途絶の不安を起こさぬよう足元のみならず、中長期にわたる対策に万全を期してほしい」と要請。その上で、節電・省エネ支援、休止火力の稼働、必要な燃料調達、原子力の最大限活用など、需給両面に業界全体で取り組む必要性を訴えた。

 電力側は、現在の厳しい経営環境や経営状況を説明。池辺会長は、電力需給対応や脱炭素電源の活用、足元の経営状況を話した。激変緩和措置に関しては、「決定したら、事業者として最大限、実施に当たって協力していく」と述べた。

 樋口社長は、東北電力の経営や電気料金の状況を説明。小早川社長は、電力需給や電気料金に関する対応、独自に取り組む節電策などを紹介し「節電・省エネを中長期的な事業構造の変革につなげ、福島への責任を貫徹する」と強調した。

 意見交換後、池辺会長は報道陣に対し、激変緩和措置について「ある一定期間、支援策を取ることは良いことだ」と述べた。電気料金の激変緩和措置は月末に取りまとめる総合経済対策に盛り込まれる見通し。会合後、西村経産相は記者団の取材に対し、激変緩和措置の規模感や枠組みは「現時点で確定したものはない。与党と調整しながら、全ての国民の負担軽減につながる透明な形での制度設計を急ぎたい」とした。

電気新聞2022年10月13日