既存都市ガス会社の託送料金水準に対し、新規参入者から不満の声が出始めている。一部の既存ガス会社は、託送料金が家庭向け料金全体の7割を占め、新規参入者が価格競争に持ち込むことが難しくなっている。新規参入者は現行の託送料金の検証を要請。専門家からも、国が託送料金引き下げを誘導する仕組みや、再審査を求める意見が上がっている。

 ガス小売り全面自由化に際して、国は既存ガス事業者の託送料金を事前に審査した。認可された大手・準大手の託送料金の割合は、標準的な使用量(月30立方メートル)の家庭で4~5割となっている。

 一方、大手以外の中には、託送料金の構成比率が大きいところもある。原料費と託送料金を除いた諸経費部分が、料金全体の1割に満たない事業者が複数あり、5%前後しかない事業者も存在している。

 例えば、ある既存ガス事業者では、標準的な料金が1立方メートル当たり177円なのに対して、諸経費は10円しかない。1カ月にガスを30立方メートル使う家庭に落とす経費は300円ということになり、新規参入者はこの範囲で競争をしなければならない。諸経費には営業や保安、システム維持にかかるコストや小売り側のマージンが含まれている。

 大手・準大手では、諸経費が1立方メートル当たり40~100円程度、1カ月に換算すると1200~3千円程度計上されており、新規参入者は「それと比べると諸経費10円はあまりに少なすぎる」と指摘する。

 ただ、託送料金そのものの多寡は、個社の事情によって変わることはあり得る。人口がまばらで需要密度が極端に薄い場合や、観光地などでピークの変動が大きい場合は、少ない需要家で導管コストを負担する必要があるためだ。

 専門家からは、現在の託送料金は国が認可したものということも踏まえ、「より低くできないか、電力・ガス取引監視等委員会で誘導していくべきだ」との声が上がる。

 諸経費の低さを懐疑的に見る意見もある。一部の専門家は、本来は諸経費に入るはずのコストが託送費用に組み込まれている可能性を指摘。併せて、託送料金が各社で大きくばらつくことにも疑問を呈している。

電気新聞2018年1月9日