電気事業連合会会長 勝野 哲氏
電気事業連合会会長 勝野 哲氏

 本格的な競争時代を迎えた電力業界。新たな市場整備に向けて詳細設計などが進む中、電気事業連合会の勝野哲会長は「『電力の安定供給』と『変化への対応』の両立が重要」と強調する。今の時代の“公益”を念頭に、「競争時代でも安定供給を成し遂げることに誇りを持ち、それぞれが創意工夫を凝らし、新たな取り組みにチャレンジしてもらいたい」と呼び掛ける。
 

原子力発電を活用していくことが不可欠

 
 ――2017年を振り返ると。

 「ガスの小売り全面自由化も始まり、エネルギーの垣根を越えた新たな競争の時代に突入した。同時に、新たな市場整備に向けた具体的な検討が始まるなど、2017年は電力・ガスシステム改革を実効あるものにするための基盤づくりが進んだ一年だった。昨夏からはエネルギー基本計画などの検討も始まった。エネルギー政策は国民生活や経済活動を支える国の根幹を成す政策で、バランスの取れたエネルギーミックスを進めることが重要だ。特に、原子力発電は3Eのバランスに優れた準国産エネルギーで、引き続き重要なベースロード電源として位置付け、活用していくことが不可欠だ」

 「原子力発電所はこれまでに5基が再稼働しており、安全を最優先に安定運転の実績を着実に積み重ねていくことが重要だと考えている。原子燃料サイクルでは日本原燃の再処理工場などで安全管理上の問題が発生したが、電力業界としてこれまでの知見や経験を生かし、必要な支援を引き続き行っていく。高レベル放射性廃棄物の最終処分については、2017年7月に国から科学的特性マップが公表された。電力業界としても、若年層をはじめ幅広い皆さまのご理解が得られるよう取り組んでいきたい」
 

安定供給は今後も変わらぬ使命

 
 ――2018年に期待することは。

 「2018年は2020年に迫った送配電部門の法的分離に向けた準備を具体化させる大切な年。競争も激化するだろうが、事業環境が大きく変わる中でも『電力の安定供給』と『変化への対応』の両立が重要だ」

 ――今後の電気事業で変わること、そして変わらぬことは。

 「本格的な競争時代では、変化のスピードが速い事業環境を的確に捉えるとともに、社会の期待やお客さまのニーズを把握していくことがさらに重要となる。ビッグデータやIoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)などのデジタル化に対応し、お客さまに新たな価値を創造し提供していくことが求められる。また、再生可能エネルギーの導入拡大に向けては、国民負担の抑制とともに、送配電ネットワークへの影響をいかに最小化していくのかといった課題に対応していかなければならない」

 「その一方で、安価で安定した電気を安全に届けることが国民生活や産業活動の基盤であることに変わりはない。今後も高い使命感と責任感を持って安定供給を果たしていきたい」

 「電気事業連合会としても、原子力の自主的安全性向上や地球環境問題への対応など、時代に応じて機能強化が求められる領域があるので、しっかりと対応していきたい」

 ――電力業界で働く人たちへのメッセージを。

 「電力会社や関係会社、協力会社の皆さまには、自然災害などでも電力の安定供給への強い使命感を絶やすことなく、頑張って頂いていることにあらためて感謝申し上げたい。『安定した電気を安価に届ける』という我々の基本的な使命に変わりはないが、この使命と安全、環境保全などを同時に成り立たせることが電気事業であり、今の時代の“公益”になってくると思う。同時に、事業環境が大きく変わる時代には、我々自身が変わっていかなければならない。競争時代でも安定供給を成し遂げることに誇りを持ち、それぞれが創意工夫を凝らし、新たな取り組みにチャレンジしてもらいたい」

電気新聞2018年1月1日