電力中央研究所が開発推進

 
 電力中央研究所は、電柱の強度診断を高度化する振動可視化技術の開発を進めている。ビデオカメラで撮影した電柱の映像をシステム上で加工し、目視で確認できない微細な揺れを見える化するもの。電柱強度の判断材料となり得る振動状態の取得の低コスト化につながる。振動可視化技術の確立を進め、電力会社や電柱メーカーなどと強度診断で活用できるよう振動データを収集していく。

 開発を進める技術はビデオカメラとスマートフォンで撮影した画像に、橋や電柱などの構造物の振動状態を計測する「光学振動計測技術」を適用。電柱の微細な振動を可視化する構想だ。

 具体的にはビデオカメラやスマートフォンを三脚に固定し、電柱を動画で1分ほど撮影。撮影した映像に光学振動計測技術を用いて、水平・垂直・奥行きなど様々な方向に揺れる電柱の微細な動きを解析する。解析後は計測した振動値をシステム上で増幅させることで、実際には目視できない微細な揺れを可視化する。これによって電柱ごとの振動を比較し、劣化が進む電柱の判別につなげる。

 開発を進める電中研グリッドイノベーション研究本部の高田巡上席研究員は「配電設備の高経年化が進む中、保守管理する現場は人材不足が懸念される。スマホなどで撮影した映像を活用できれば、現場作業の効率化につながる」と意義を強調。その上で現状について「振動は可視化できたが、センサーで計測した振動数値と比較し精度の確認をする必要がある」と説明し、今後は電柱強度診断への振動可視化技術の適用性を検証していくとした。

 国内の一般送配電事業者と通信事業者が保有する電柱は約3600万本。電柱の強度は一般的に目視やセンサーなどでひび割れの深さを確認する。ただ、目視確認では作業員の判断に委ねられる。

 一方、電柱強度の判断材料の一つとなり得るのが振動状態。電柱は風などを受けて常に微細な振動が発生しているが、目視確認することは難しい。そのため、センサーを利用し、振動状態を数値化している。ただ、センサーの設置は電柱の数が膨大なため設置コストが課題に挙げられていた。

電気新聞2022年9月15日