エコキュートの累計出荷台数が、2021年度末時点で800万台を超えたことが分かった。21年度は単年度の出荷台数でも初めて60万台を突破した。近年のエコキュート市場は、00年代中頃に販売された製品を中心に買い替え需要が顕在化し、導入ペースが加速している。この動きは当面継続すると見込まれ、出荷台数は好調さを維持しそうだ。(矢部 八千穂)
 

供給上回る需要で「品薄感」継続

 
 日本冷凍空調工業会の統計によると、22年3月の出荷台数は約6万8千台。その時点の累計出荷台数は約806万4千台となり、節目の800万台を突破した。01年の商品化以来、約21年。累計出荷台数は07年に100万台、11年に300万台、16年に500万台、20年に700万台を記録していた。

 エコキュートはヒートポンプ技術による高い省エネルギー性などが認められ、オール電化の拡大とともに国内で普及が進んできた。年間出荷台数は、本格的な普及が始まった00年代中頃から順調に伸び続け、10年度は約56万台に到達。東日本大震災後はオール電化に対する逆風によって40万台程度のペースに減速したものの、15年度を底に復調。16年度からは堅調な推移をみせていた。

 近年は、00年代中頃の本格普及が始まった時期に販売され、耐用年数を大幅に超えた機器を中心に買い替え需要が顕在化。さらなる活況を呈している。20年度後半以降は前年度比2桁増の伸び率を記録する月が大半となり、21年度は出荷台数が初めて60万台に達した。22年度に入っても伸び率の勢いは衰えていない。

 買い替え需要が発生しているのは、利用者にとってエコキュートを更新した方が費用や手続きなどの面でメリットが大きいからだ。オール電化住宅がガス給湯器に買い替える場合、ガス管の設置など工事に多額の費用が必要となる。契約する電気料金プランもオール電化向けとなっていることが多い。

エコキュートの出荷台数は買い替え需要などで好調に推移している(写真は三菱電機が9月に発売する新製品)

 ある大手メーカーの営業部門社員は「21年度は買い替えが約6割、新規導入が約4割だった」と現場の実感を語る。今後も耐用年数を大幅に超え、更新が必要になる機器は継続して発生することが確実視される。エコキュート市場の盛り上がりは、この先も続く見通しだ。

 ただ、課題もある。オール電化営業を担う大手電力社員は「昨年の秋から冬ほどではないが、今年の夏になっても品薄感が続いている」と話し、供給を上回る需要が発生している現状を明かす。加えて、耐用年数を超えてから日が浅い設置後10~15年のエコキュートの更新が進んでおらず、買い替え需要を開拓しきれていないとみられる。

 50年のカーボンニュートラルに向けて、家庭の脱炭素に貢献するエコキュートはさらなる成長が期待できる分野。それだけに多くのメーカーにとって、こうした課題の解決は重要なテーマとなりそうだ。

電気新聞2022年8月30日