日本郵船やIHIなど4者が研究開発する浮体式アンモニア貯蔵再ガス化設備搭載バージのイメージ図

 

IHIなど4者、バージ共同研究へ

 
 日本郵船、IHIなどは22日、浮体式アンモニア貯蔵再ガス化設備搭載バージ(A―FSRB)の実用化に向けて共同研究開発契約を結んだと発表した。燃料アンモニアを既設の石炭火力発電所で使う際、貯蔵タンクや再ガス化に関わる設備の用地確保が問題になる可能性がある。浮体式にすれば陸上に建設するより期間を短くでき、低コストに抑えられるため、燃料アンモニアの早期導入に資すると見込まれる。

 共同研究開発契約は日本郵船、IHI、日本シップヤード、日本海事協会の4者が締結した。A―FSRBは産地で液化したアンモニアを洋上で受け入れて貯蔵する。需要に応じてアンモニアを温めて再ガス化し、パイプラインで陸上に送出する。実用化時期は未定で、アンモニア発電の普及状況をにらみながら検討する。

 浮体式の貯蔵・気化設備は陸上式と比べて開発期間が短く、コストも安価にできる。陸上に18万立方メートルのLNGタンクを造る場合、4~5年で約750億円かかるが、浮体式の新造なら3年で240億~280億円との試算もある。さらに、既存船の改造では1年、約80億円に圧縮できる。浮体式設備によって初期投資を抑え、燃料アンモニアの早期導入を促す。

 日本郵船と日本海事協会は2020年8月、ジャパンマリンユナイテッドを含む3者で浮体式の研究開発に着手。燃料アンモニアの需要拡大を見込み、関連機器メーカーとしての知見を持つIHIを招いた。

 共同研究開発を巡っては、日本郵船がプロジェクト全体を管理し、日本シップヤードは船型開発や機器配置検討を担う。IHIはアンモニアの払い出しや気化プロセスを検討する。日本海事協会は安全性に関する技術検証などを行う。

 バージは平底の船舶で、主に内陸水路や港湾内で重量貨物を積んで航行するために造られる。エンジンを積んでいないものが多く、タグボートを利用して移動する。

電気新聞2022年8月23日