首都大学東京 和田圭二准教授
首都大学東京 和田圭二准教授

企業のニーズの一方、実験まで学べる研究室は少ない

 
 半導体を用いて電気の変換、制御などを行うパワーエレクトロニクス技術は、電力に加え、鉄道や家電など様々な産業で広く活用される。電気自動車(EV)普及拡大などにより、同技術を専攻した学生は現在、企業にとってノドから手が出るほどほしい人材。首都大学東京大学院の和田圭二准教授は「パワーエレクトロニクス専攻の学生が引く手あまたな一方、同技術を実験まできちんと学べる研究室は限られている」と指摘する。

 人材不足を埋めるため、パワーエレクトロニクスを専攻していない学生が就職後、同分野の研究開発、装置設計などに携わることも多い。中には、「理学部出身者が配属されることも」。そのため電気学会では、若手技術者向けの講習会を年1回開催。和田准教授は、「学問としてのパワーエレクトロニクスの全体像を知ってもらいたい」と広く若手育成に力を注ぐ。
 

工作教室などの子ども向けイベントで理科に触れる機会を

 
 一方、進路を決める時期の高校生にとって、パワーエレクトロニクス、ひいては電気工学自体、なじみ深い学問とはいえない。「高校の先生や親に『就職に強い』と勧められ、電気工学を選ぶ学生も多い」という。子どもの理科離れが叫ばれて久しいが、和田准教授が自身の子育ての中で感じるのは、子どもが理科に触れる機会は意外と多い。「企業や大学、科学館などが子ども向けの実験教室、工作教室を数多く開催している。親御さんには、こうしたイベントも活用してほしい」と話す。

 研究室の学生には「未来を見せること」を心掛ける。「EVなどは現在進行形の技術。学会レベルでは、ジャンボジェット級の電気飛行機の実現まで真剣に議論されている。研究がまだまだ未来へ広がっていくこと伝えたい」と話す。

 今後は、情報通信など他分野との協調・連携がますます重要となる。アジア圏からの留学生増加など、研究環境は日々変化していく。「留学生らとの日常的にコミュケーションで、英語へのハードルが低くなっていることがいまの学生の長所。海外研究者との共同研究など、研究でも人でも既存の枠にとらわれない挑戦を目指してほしい」と次代への期待を語る。



電気新聞2017年12月4日