2015年7月に策定された長期エネルギー需給見通しでは、原子力比率は20~22%とされている(グラフ:経済産業省ホームページ)
2015年7月に策定された長期エネルギー需給見通しでは、原子力比率は20~22 %とされている(グラフ:経済産業省ホームページ)

 電力中央研究所は、2030年度の電源構成(エネルギーミックス)見通しで、原子力発電の発電電力量比率「20~22%」が達成できなかった場合の経済影響を試算した。22%を基準に、過去に議論された「15%」まで7ポイント下がった場合を想定。再生可能エネルギー比率を7ポイント高めて代替すると、30年断面の実質GDP(国内総生産)は基準比で2兆7千億円減る。FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)賦課金の負担などが上がり、家計の所得・消費や企業の投資を押し下げるとした。

 電源構成の再生可能エネ比率は22~24%だが、電中研は22%から7ポイント増やした29%の比率を想定した。

 LNG(液化天然ガス)火力の比率を電源構成見通しの27%から7ポイント増の34%にして代替した時の経済影響も試算した。それによると、30年断面の実質GDPは基準比で2兆5千億円減少する。燃料輸入量の増加によって電気料金や物価が上昇し、家計や企業活動に悪い影響をもたらすとした。

 原子力比率の低下に伴う30年断面の企業の実質生産額は、再生可能エネ比率を上げて代替する場合に計5兆2千億円、LNG比率を上げる場合に計4兆7千億円、それぞれ基準比で減る。実質生産額が最も減少する業種は機械産業で、最大2兆円。物価上昇による輸出競争力の減少が要因とした。また、家庭1世帯当たりの所得は30年断面で基準比1万8千~2万2千円減る。

 電中研は30年までの累計の実質GDP減少額もはじいた。再生可能エネ比率を上げて代替すると13兆円、LNG比率の上昇で補うと同11兆円、それぞれ減少するとした。

 「15%」の原子力比率は、旧民主党政権下の12年にシナリオの一つとして示された経緯などから採用した。15年の電源構成策定議論では15%を推す意見も出た。民間試算では、延長運転を行わずに30年時点で残るプラント約20基が稼働すれば15%になる。一方、電源構成の原子力比率「20~22%」は、延長運転プラントを含む30基強が稼働率8割で動けば達成可能とされている。



電気新聞2017年12月6日