調達コスト増、最終赤字7社

 
 大手電力10社の2022年度第1四半期(4~6月)連結決算は、燃料価格高騰や卸電力価格の高止まり、期ずれ差損の拡大などが利益を圧迫し、純損益では北海道、中部、四国を除く7社が最終赤字となった。売上高は、燃料価格上昇に伴う燃料費調整額の増加などで全社が増収。小売販売電力量は北海道、北陸、関西、四国が増え、東北、東京、中部、中国、九州、沖縄が減った。

 燃料価格高騰は続く見通しで、サハリン2などLNG調達リスクも顕在化している。中部電力決算グループの坪内優和氏は、「卸電力価格の上昇やLNGのスポット調達増といったリスクも想定され、先行きの不透明感が継続している」と説明。対応策として、市場対応力強化やコストダウンの徹底などを挙げた。

 経常損益も北海道、中部、四国を除く7社が赤字となり、前年同期の3社から拡大。東北は、燃料・電力調達の費用が大きく増えたことが響いた。3月の福島県沖地震で停止した火力発電所の電力を高値が続く卸電力取引所などから調達したことや、高騰する石炭価格の影響を受けた。

 10社のうち唯一経常損益が好転した四国は、前年同期の38億円の赤字から49億円の黒字を確保。燃料価格高騰や出水率の低下があったものの、伊方発電所3号機の稼働が利益を押し上げた。

 小売販売電力量は、新型コロナウイルス感染拡大からの経済活動の回復や競争の激化などが影響し、4社が増加、6社が減少とまだら模様だった。前年同期比9.5%の大幅増となった関電は「競争の進展はあるものの、燃料価格や卸電力価格の高騰で新電力の撤退などが影響している」と分析した。
 

燃調回収不足、50億円規模に

 
 一方、燃料価格高騰に伴い、燃料費調整額の算定諸元となる平均燃料価格が上昇。2~6月分で東北、北陸、関西、中国、四国、沖縄の6社が燃料費調整の上限価格を突破した。突破した6社の第1四半期における回収不足額は、計50億円以上になるとみられる。

 燃料価格上昇は続いており、7月以降には北海道、東京、九州も上限を突破し、不足額の総額はさらに膨らむのは確実。四国は、通期で500億円を超えると想定した。北陸電力東京支社の沼田典明支社長は「22年度業績にかなりの負荷影響を及ぼす」と懸念を示した。
 

実力ベースでは好転も

 
 大手電力10社の2022年度第1四半期連結決算は、期ずれ影響を除いた実力ベースでの経常損益では好転するケースも複数あった。期ずれ影響を除いた経常損益を「算定していない・開示しない」とする北海道、四国、沖縄を除く7社のうち、中部、関西、中国の3社は増益になった。

 7社のうち、東北、東京、北陸、関西、中国、九州の6社は、期ずれ影響を含む経常損益が赤字だったが、期ずれ影響を除くと東京、九州を除く4社は黒字を確保。ただ、電力関係者は「電力会社の第1四半期は通常、費用が積み上がっておらず、利益が出やすい。そういう観点では(今回黒字になっている会社も)利益水準は低い」と指摘する。

 期ずれ影響を除く経常利益で、中国は前年同期比70%増の170億円程度と好調。他社販売増や、新規電源となる三隅発電所2号機(石炭、100万キロワット)が3月から試運転に入ったことなどが貢献した。石炭利用の増加で、石油やLNGの使用量が減少した。

 関西は期ずれのマイナス影響が約680億円に達した。この影響を除くと経常利益は同45.8%増の510億円程度を確保。販売電力量の増加に加え、燃料上流事業や海外事業といったグループ会社の増益、販売単価の上昇、介護事業の売却益などが要因になった。

 中部も同様に、期ずれ影響を除く経常利益が同31.7%増の790億円程度になった。修繕費の削減など電源調達コストを減らしたほか、顧客ごとの供給コストに応じた販売価格を見直した。この結果、中部電力ミライズが213億円の増益となり、全体の利益を押し上げた。

 一方、東北、東京、北陸、九州は期ずれ影響を除いても経常損益が悪化。九州は、300億円程度の黒字から今期は82億円程度の赤字に落ち込んだ。卸電力取引価格の上昇に加え、原子力発電量が約3分の1に減少したことなどが響いた。

 東京も294億円の黒字から19億円の赤字に転落。東京電力エナジーパートナー(EP)の経常赤字が、前年同期から大幅に拡大したことなどが影響した。

電気新聞2022年8月4日