南極観測隊初参加の松嶋さん(左)と2回目となる内山さん(写真は大井ふ頭での資機材積み込み時)
南極観測隊初参加の松嶋さん(左)と2回目となる内山さん(写真は大井ふ頭での資機材積み込み時)写真提供:関電工

 国立極地研究所が派遣する第59次南極地域観測隊に、設営隊員として関電工から2人が参加する。越冬隊に参加する内山宣昭さん(28歳)と、夏隊に参加する松嶋望さん(31歳)だ。内山さんは第58次の夏隊(2016年11月~17年3月)に参加した経験を持ち、松嶋さんは今回が初めて。現地では設営隊の機械担当として、昭和基地の電気・空調設備の設営や保守管理・更新などに携わる。過酷な環境下での作業となるが、2人とも「楽しみたい」と笑顔を見せる。

 南極観測隊は、1956年の第1次観測隊派遣から60年以上もの歴史を持つ。今回の第59次観測隊は越冬隊32人、夏隊41人で構成される。12日、南極観測船「しらせ」が東京・晴海埠頭を出港。出港を見送った2人は27日に空路で日本を出発し、オーストラリア・フリーマントル港でしらせに乗船して南極を目指す。夏隊は2018年3月、越冬隊は19年3月の帰国を予定している。
 

屋外作業は冬前までが勝負。ドローンで送電網などの点検も

 
 関電工は1986年の第28次観測隊から、計32回にわたって南極へ社員を派遣。現在も第58次越冬隊として齋藤健二さんが南極で業務を遂行中だ。内山さんは、齋藤さんとバトンタッチすることになる。

 今回、夏季は新設する基本観測棟の2階部分の建設工事に伴う分電盤の搬入や、老朽化した機器の更新、光ケーブルの補修・新設などを行う。一方、冬季は基本観測棟1階部分の電気設備工事、昭和基地の通信・照明器具の更新工事などを行う予定だ。また、送電網や太陽光パネルの点検にドローンを初適用する。「冬季は太陽が出ない“極夜”という期間があったり、ブリザード(暴風雪)が多発し、屋外作業がほとんどできない」(内山さん)。そのため、冬季に入るまでが勝負となる。

 これまでに2人は、雪山での訓練や重機の資格取得などに励んだ。内山さんはさらに、発電機の組み立て・メンテナンス、焼却炉の組み立てや運用・管理などの訓練にも参加。「電気工事以外のことも学べて視野が広くなり、知識・スキルの幅が広がった。(現地で)電気設備以外の分野でも満遍なくサポートしていきたい」と話す。
 

白夜やオーロラ、南極の自然を楽しみたい

 
 今回初参加の松嶋さんだが、「齋藤さんや内山さんから話を聞くなどして業務内容は理解した。特別不安はない」と力強い。「仲間たちと与えられたミッションをやり遂げるとともに、白夜やオーロラなどの自然現象を楽しみたい」と意気込む。その半面、「子どもがパパっ子のため、不在の間、子どもがどう変わるか家族が不安がっている」と1児の父としての顔も。

 第58次隊に続けて参加する内山さんは、「冬季の過酷な環境、自然現象に対応できるか不安は残るが、2回目でもあるので大体の流れはつかんでいる。仕事だけで手いっぱいにならないよう、南極の自然を楽しみたい」と話し、後進向けの情報発信にも取り組む考えだ。内山さんも1児の父親。「帰国時は幼稚園の卒園式に間に合わない」と顔を曇らせるが、家族、会社のバックアップに感謝する。

電気新聞2017年11月17日付