1ドル=135円台を付けた円相場を示すモニター(13日、東京都港区の外為どっとコム)

 

135円台前半、24年ぶり水準

 
 円安の急激な加速が、電力会社などの輸入燃料コスト上昇に拍車を掛けている。為替影響による燃料調達費の増減は、燃料費調整制度で一定程度緩和されるが、調整できる上限を超える会社が相次ぐなど効果は限定的。経済産業省・資源エネルギー庁は、上限撤廃に消極的とみられ、「現在の円安水準は厳しい状況だが、(為替相場については)対策が乏しく、注視するしかない」(電力会社)と懸念を強めている。

 13日の東京外国為替市場は、日米の金利差がさらに拡大するとの見方を受け、円安が加速。午前に一時135円台をつけた後、午後1時すぎには1ドル=135円台前半まで値下がりし、24年ぶりの円安水準まで達した。松野博一官房長官は同日午前の会見で、「最近の為替市場で急速な円安の進行がみられ憂慮している」と述べた。

 円安による燃料調達コスト増加は、電力やガス会社の収支に大きな影響を与える。電力10社のうち、2022年度通期見通しを唯一公表している関西電力の場合、為替レートは1ドル=125円程度と予想し、1円円安になると経常利益が80億円減少する。ガス会社の22年度通期見通しでは、東京ガスが1ドル=120円と想定し、1円円安の収支悪化影響は8億円程度。大阪ガスはそれぞれ115円、6億6千万円となっている。

 為替影響が緩和される燃調制度について、7月分では10社のうち北海道、東京、中部を除く7社が調整できる上限を突破した。だが、エネ庁は各社規制部門の収支や消費者保護といった観点から、上限撤廃を見送る方向で調整している。

 その一方で、エネ庁は各社の自由料金に関する標準メニューについて、燃料調達コストの変動などに応じて柔軟に変更できる仕組みを検討しているもようだ。導入後には、標準メニューで新規受け付けを再開するよう促す。

 日米金利差は拡大基調が続くとみられ、長期に及ぶ円安傾向も想定される。資源価格高騰との“ダブルパンチ”による燃料調達コストの増大で、電力・ガス業界の経営は厳しさを増している。

電気新聞2022年6月14日