LNG冷熱を活用して養殖したトラウトサーモン

 東邦ガスは2日、知多緑浜工場(愛知県知多市)でLNGの未利用冷熱を活用して養殖したトラウトサーモンの出荷を開始した。同社は昨年11月から日本水産と協力し、大型水槽を使った実証試験を行ってきた。サーモンは約7カ月で平均1.5~2キログラムに育ち、今月中に順次水揚げし合計4トン程度を出荷。日本水産が「知多クールサーモン」のブランド名で卸売し、生食用として周辺地域のスーパーなどに並ぶ。

 都市ガス工場では海外から輸入したマイナス162度のLNGを気化し、熱量調整や付臭を行って都市ガスを製造する。今回の養殖実証は気化設備の熱交換器を通り、冷却された海水を水槽の温度調整に用いている。

 サーモンは暑さに弱く、水温20度以上では生育が難しい。国内の養殖品は4~6月頃に出荷が集中するため、水温が上がる夏季に生サーモンを提供できれば付加価値が高まるという。

 東邦ガスは将来の事業化を想定し、大型水槽での生育効率やサーモン売価、LNG冷熱の活用方法などを検証してきた。育てたサーモンは水槽付近に水揚げして締め、血抜き作業まで実施。その後、日本水産に引き渡して運搬・箱詰めされ、周辺地域で販売される。一部のサーモンは水槽内に残し、7月まで高温への耐性試験を続ける予定だ。

 2日には工場で水揚げの様子を報道関係者に公開した。都市ガス事業者がサーモンの陸上養殖に進出するのは初めて。

電気新聞2022年6月3日