電力小売り自由化後、対面営業が成果を上げている
電力小売り自由化後、対面営業が成果を上げている

 

 2016年4月の電力小売り全面自由化、2017年4月のガス小売り全面自由化を経て、電気・ガス市場を巡る攻防が激しくなってきている。電気事業では400者を超える小売電気事業者が誕生。ガス事業では大手電力会社の本格参入が始まった。一方、電気事業はシステム改革に伴う新たな市場の創設や連系線利用ルールの見直しなどによって、制度がさらに複雑になりつつある。同時に、将来的な電力需要の減少、太陽光をはじめとした再生可能エネルギーの増加は、電気事業の構造自体に変化をもたらしつつある。
 

 電力システム改革は3つの段階を経て実施されており、現在は2020年4月の電力会社の発送電分離(送配電部門の法的分離)に向けて終盤を迎えつつある。第1段階として15年4月に電力広域的運営推進機関(広域機関)が設立。第2段階では16年4月から電力、17年4月からは都市ガスの小売り全面自由化がそれぞれスタートした。これに先立ち、15年9月には電力取引監視等委員会(現在は電力・ガス取引監視等委員会)も発足している。
 
 電力・ガスの小売り全面自由化に伴い、電気事業では小売電気事業者が400者超となった。大手電力会社も子会社などを通じて他のエリアに参入しており、大都市圏を中心に競争が激しくなってきている。また、ガス事業でも大手電力会社が新規参入し、関東・関西では電気・ガスのセット販売による攻防が本格化している。

 現在、電気事業は2020年4月の発送電分離に向けて、新たに生まれる市場や電力系統の新たなルールなどを巡って、詳細な制度設計が進められている。今後、電気は経済的価値に応じて、「キロワット時」「キロワット」「Δキロワット」「非化石」に分割されて、事業者間で取引が行われる見込み。それを扱う市場として、従来の「卸電力市場」に加え、「容量市場」「需給調整市場(現在は調整力公募)」「非化石価値取引市場」が創設される。また、新電力が安価な電源を容易に調達できることを目的に、「ベースロード電源市場」も新設される予定だ。

 
 さらに、地域間連系線の利用ルールも「先着優先」から「間接オークション」へと変更される。これに伴い、エリア間の値差の影響を回避するため、差金決済契約や間接的送電権などの仕組みも取り入れられる。これ以外でも、既に電力会社の発電部門と小売部門との間で行っていた電気の内部取引をスポット市場経由にする「グロス・ビディング」、インバランス料金の見直しなどが実施されている。

 
 電気新聞では、複雑化する電気の取引形態などを分かりやすく解説するため、正確かつ分かりやすく伝えていくことを目指していく。