価格高騰、今後も不透明感続く

 
 JERAと大手電力8社の2021年度燃料消費実績は、原油を除くと第3四半期(4~12月)までの傾向と大きな変化はなく、LNGが前年度から減少した一方、石炭は前年度比10.4%増、重油は同87.4%の大幅増となった。LNGは5年連続の減少で、中国と沖縄を除く7社が前年を下回った。LNG価格は高値が続いており、消費量を抑えるための電源差し替えが進んでいるようだ。


 LNG消費量は06年度以来15年ぶりに4千万トンを割り込んだ。06年度は北海道、北陸、四国、沖縄にLNG火力はなかったため、全体の21年度設備稼働率は当時よりも低かった可能性がある。減少率が同36.6%と7社中最大だった関西は、原子力利用率の大幅な上昇などが影響したとみられる。

 石油火力を九州が19年度、JERAが20年度から全面的に運用停止する中で、重油消費量は9年ぶりに増加した。北海道はLNG火力の定期検査による停止分を重油火力で代替したため、同59.5%増となった。同72.3%増だった北陸も需要増に対応するため、LNGで賄いきれない分を重油で補った。

 石炭消費量は4年ぶりに増加。JERAは同26.9%増で、常陸那珂共同火力発電所1号機(65万キロワット)の営業運転開始が消費を押し上げたもよう。四国は、石炭火力の定検停止日数が減少したため同8.1%増だった。九州は、松浦発電所(計170万キロワット)での荷役設備損傷や、松浦2号機(100万キロワット)の定検によって同22.5%減となった。

 中国は9社中唯一、LNG、石炭、重油の3種とも消費量が増えた。産業用を中心にコロナ禍からの反動で需要が増加したことに加え、他社電源のトラブルもあって火力発電量が増えた。

 LNG、石炭とも消費量が最大のJERAの21年度発電電力量は2473億キロワット時。内訳は、LNGが1923億キロワット時で同4ポイント減の78%、石炭が550億キロワット時で同4ポイント増の22%だった。

 世界規模でのカーボンニュートラル推進により、化石燃料の上流開発への投資は減少。この影響で需給が引き締まり燃料価格は高値が続く中で、ウクライナ危機が加わってさらに上昇している。電力10社の決算では9社が22年度見通しを未定としており、燃料価格の動向は不透明感が増している。

電気新聞2022年5月6日