都内の大型商業施設では22日午後6時半から外壁照明を消灯、店内の空調温度を下げるなど、節電に応じた(22日、東京・銀座)

 

準備に時間、発動難しく

 
 経済産業省は東京、東北エリアを対象に初の電力需給逼迫警報を発令した。需要面で国が取り得る対策のうち、伝家の宝刀とされる電力使用制限令は、その性質上、元から対象外だった。今回の需給逼迫は季節外れの厳気象となったことが一つの要因。そうした場合の適切な需要家周知の方策について、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)であらためて議論する方針だ。

 需給逼迫時、電気事業者が主体となって取り得る対策としては計画停電が知られる。一方、経産省は使用制限令や、需給逼迫警報などで需要抑制を促せる。

 使用制限令は電気事業法第34条に基づき、大口需要家などの需要をいわば強制的に抑制できる。違反者には罰金刑もある。これまでにオイルショック、東日本大震災を受けて出された。

 東日本大震災時は東京、東北エリアで2011年7月から9月まで発動。契約電力500キロワット以上の大口事業所に対し、平日午前9時から午後8時の間、使用最大電力を前年比で15%減らすことが義務付けられた。

 使用制限令は、その対象や用途、日時や使用量を設定できるのが特徴。罰金刑が存在することから、その例外などを告示で定める必要もあり経産省職員の事務負担も大きい。十分な周知期間も必要だ。経産省・資源エネルギー庁によると、東日本大震災時は2~3カ月の準備期間を経て発動に至った。「明日足りないからといって、すぐに対応できない」という。

 大規模な電源脱落などで恒常的な需給逼迫が想定される際、数カ月の準備期間を経て発動するイメージとなる。18年の北海道ブラックアウトも使用制限令はなかった。昨冬の需給逼迫の際も準備期間を考えると難しく、今回も必然的に選択肢とはならなかった。

 一方、法令に基づかず即座に対応できるのが、今回発令された需給逼迫警報だ。東日本大震災後の12年に制度ができて以来、意外にも「発令機会はなかった」(エネ庁)。唯一発令に近づいたのが、昨冬の需給逼迫だったが、「予備率3%を下回る見通しになった場合」とする条件を満たさなかったため見送られた経緯がある。

 需給逼迫警報の課題は発令がどうしても前日の遅い時間になってしまう点だ。電力需給は当日の気象に大きく左右されることから、精度の高い天気予報を待つ必要がある。発令が直前になれば、需要家の準備期間が限られるといった課題があるが、逆に早くから発令してしまうと、天気予報の変化で“空振り”に終わる恐れもある。

 季節外れの厳気象となった場合に起きる電力需給逼迫時の需要家周知の在り方は総合エネ調の電力・ガス基本政策小委員会などで、今後あらためて議論する。早速25日に会合が開催され、まずは今回の需給逼迫の状況を有識者に共有する予定だ。

電気新聞2022年3月24日