2021年2月に「次世代スマートメーター制度検討会」より、低圧の次世代スマートメーターの基本仕様が公表された。同仕様では、スマートメーターが取得、保持、提供するデータの種類・粒度・頻度が、利用シーンを想定した費用便益とともに提示された。その後、検討課題となっていた高圧特高の次世代スマートメーターのデータ仕様、低圧ならびに高圧特高それぞれのBルート通信方式などに関する議論が進み、図のように次世代スマートメーターの仕様がおおむね固まった。

 2月に示された低圧スマートメーターの次世代仕様では、将来、電力取引の時間単位が現行の30分から15分に短縮されることを想定。消費電力(有効電力)の30分値に加え15分値を必要期間保持するものとし、15分値に切り替え可能な仕様とすることが決められた。また、配電系統運用を高度化し、再生可能エネルギー大量導入・脱炭素化や系統の安定化、配電損失低減を促進するために、有効電力に加え、無効電力、電圧の各1分値、5分値、15分値、30分値の計測値をそれぞれ必要な期間保持する仕様が決定。このほか現行の通り30分値をMDMS(メーターデータ管理システム)、託送業務システムから小売事業者などに1時間以内に提供するほか、10%程度以上の需要家の5分値を数日以内にMDMSに収納し、活用できるようにすることが仕様に盛り込まれた。さらに、1分値について、3%程度以上の需要家データを10分以内にMDMSから活用可能とすることとなっていた。
 

高圧特高用メーターも検討

 
 その後、第6回・7回の次世代スマートメーター制度検討会において、高圧特高(以下、まとめて高圧)のメーターのデータ仕様について検討がなされ、基本的に低圧の仕様に合わせることが妥当であると判断された。ただし、電圧は計測項目に含めないこと、低圧では実装予定となった約3%の需要家の1分値データの計測・伝送も仕様に含めないことが決められた。これは、高圧のメーターでは設備構成上、正確な電圧計測が難しいこと、今後一般送配電事業者が、配電系統にIT開閉器の導入を進め、有効電力、無効電力、電圧の1分値を計測することなどを踏まえた判断である。

 新たな議論において注目を集めていたのは、Bルートと次世代メーターで新設する「IoTルート」の仕様である。Bルートは、現行の低圧メーターでは、主要な方式として920メガヘルツ帯の無線を用いるWi―SUNのほか、電力線搬送(PLC)などから需要家が選択して開通し、30分値のほか、リクエストに応じて瞬間的な電力消費量を需要家に通知することができる。既にエネルギーマネジメントやバーチャルパワープラント(VPP)に適用されているが、さらにユーザーの利便性を高めるため、近年、多くの人が汎用的に使用するWi―Fi(無線)をBルートに適用し、スマートフォンやタブレット端末を接続してデータ取得ができるようにすることが検討された。2.4ギガヘルツ帯を使用する現在のWi―Fiは920メガヘルツ帯のWi―SUNと比べて障害物の影響を受けやすく、一般的に到達範囲が狭くなることから、Wi―SUNを主方式、ニーズが少なかったPLCに替えてWi―Fiを従方式として、需要家が選択する提供方法を整えることとなった。また、現行の高圧メーターでは、イーサネット(有線)でBルート通信を行う仕様になっているが、使い勝手向上の観点から無線方式のニーズが示されていた。需要家のメーター設置環境は様々で、遮蔽物が多い状況や地下にメーターが設置されている場合には無線の適用が困難であることを踏まえ、イーサネットを主方式とし、需要家のニーズに応じて到達距離が長いWi―SUNを搭載する仕様とすることが決められた。

 一方、次世代メーターでは、共同検針のためガス・水道のメーターとの通信や、蓄電池、電気自動車充放電器などのリソースとの通信を行う「IoTルート」が考えられており、通信方式など詳細は今後の課題となっている。また、Bルートについて、現在はメーターと通信できる機器は1つに限られているが、複数台の接続を可能とすることや開通フローの容易化、セキュリティーの確保など、Bルート運用ガイドラインの改定が予定されている。
 

通信部を交換可能な構造に

 
 このように、次世代スマートメーターでは通信機能の仕様が大きく膨らむことになるが、今後も通信技術の進展やニーズの広がりなどに柔軟に対応できるように、メーターの通信部を必要に応じて交換可能な構造として、国内の仕様を統一することが決定された。DX化のキーデバイスとして、次世代スマートメーターによるエネルギーデータ活用とイノベーション促進の下地が整ってきているといえよう。

電気新聞2022年1月17日