洋上風力発電所の保守に向かう船舶のイメージ

 三菱重工業は8日、洋上風力発電所の保守に用いる船舶向けに、ウオータージェット推進装置を受注したと発表した。船の推進や加速を担う主要部品で、日本特有の厳しい潮流でも洋上風車にアクセスできる加速性能を持つ。この装置には、風車や岸壁に船を近づける接舷(せつげん)支援システム、自動追従システムも搭載している。受注額は非公表。同社は洋上風力発電所の広がりを見据え、同装置の販売に力を入れる方針だ。

 造船会社のツネイシクラフト&ファシリティーズ(広島県尾道市、神原潤代表取締役)から受注した。同社はウオータージェット推進装置を船舶に組み込み、洋上風車の保守、運営を手掛けるイオスエンジニアリング&サービス(東京都千代田区、須藤豊社長)に納入する。

 ウオータージェット推進装置は船底部に取り付け、吸い込んだ海水を後部に吐き出して、船を前に推し進める。ポンプの技術を応用しているため、三菱重工の原子力セグメントが開発を手掛けている。

 同社は、ウオータージェット推進装置を防衛省や海上保安庁の艦艇、巡視船向けに納めてきた。約200台の納入実績がある。優れた加速性がある一方で、独自の技術で、港湾内など低速が求められる海域でも安定した航行が可能という。装置はステンレス製で、腐食の発生を抑えている。

 三菱重工にとって、洋上風車の保守員を乗せる船舶向けでは初めての受注になる。ウオータージェット推進装置は水中ロボットなどとの連動も可能。海中の点検業務も大幅に効率化できるとしている。

 同装置に不具合があった場合は、全国に設けているサービス拠点で修理する。

 三菱重工は洋上風力の円滑な保守を支えるため、ウオータージェット推進装置を拡販する方針。年10台程度を販売し、年数億円規模の売り上げを目指す。

電気新聞2022年3月9日