日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格が一段と上昇している。日中は太陽光発電の稼働によって価格が抑えられる一方、燃料高の影響で朝晩の上げ圧力は強まるばかり。今後寒さが緩んで需要減が進む見通しだが、3月の先物価格は8日の取引終了時点で40円近くまで急騰。市場関係者は「需要の端境期も高値が続くことを覚悟する必要がある」と指摘する。

 3月に入り需要電力量は前月に比べ約1割減少した。一方、月が替わると同時に電源の定期点検が増え、スポット市場の需給バランスは緩んでいない。

 1~10日受け渡し分のシステムプライスは平均26円超と、前月平均を約5円上回った。特に昼夜間値差の拡大が目立つ。今後も需要減と太陽光の稼働増で日中の価格下落が進む一方、朝晩は価格上昇圧力が強まりそうだ。

 主因はLNG価格の高騰だ。アジア向けスポット価格は欧州の厳しいガス需給に引きずられ、春先から上げ基調にある。ウクライナ情勢の緊迫が続く足元では、期近の先物価格が100万Btu(英国熱量単位)当たり一時60ドル近くに上昇。LNG火力の限界費用に換算すると50円前後に上るという。さらに市場関係者は、起動費がかさむ可能性を指摘する。価格が下がる日中はLNG火力を動かしても約定しない可能性が高い。そうなれば日中の運転をやめ1日1回の起動を朝晩2回に増やす動機が強まる。増分費用は売り入札価格に上乗せされる。

 市況高騰を警戒し、電力先物価格も急騰している。欧州エネルギー取引所(EEX)では8日、3月の週間・月間物で30円台の約定があったもよう。清算価格(東京ベースロード商品)は、2022年第11、12週(3月14~27日)が前日比4割高の42円82銭と、今年度最高値を更新。月間物は同2割高の36円08銭を記録した。4月以降も25円以上の高値がつく。市場関係者は「LNG火力が動く時間帯は、スポット価格が下がる要素が見当たらない」と話す。

電気新聞2022年3月10日