「3.11とは違う揺れ」牙むく

 
 2021年2月13日の福島県沖地震で、相馬共同火力発電(福島県相馬市、庄司一夫社長)新地発電所(新地町、石炭、1、2号機各100万キロワット)は大きな被害を受け、運転停止に陥った。11年3月の東日本大震災では無傷で済んだタービン関連設備が損傷するなど、地震はその度に新たなリスクを伴って発電設備を襲う。そんな状況に立ち向かい、地震から1年を経ずに全面復旧を遂げた現場を取材した。


 また来たのか――。その揺れは東日本大震災の再来を思わせるほど激しいものだった。

 午後11時すぎ。自宅にいた発電所の所員たちは、まず身の安全を確認する。次いで津波の危険がないことを知ると、急いで発電所に向かった。設備の被害をただちに調べなければならない。

 現場の担当者は、発電所をくまなく点検する。主機に大きなダメージを受けたことがすぐに分かった。ボイラーチューブが破断・損傷したことに加え、タービンの軸受け台が曲がっていた。
 

回転を支える

 
 軸受け台は、高速で回転するタービンの軸を支え、軸の位置と向きを固定する。これが変形すると、回転に悪影響を及ぼし、運転を続けられない。

 相馬共同火力は地震後ただちに非常態勢に入った。早期復旧実現委員会や、供給先を含めた早期復旧推進5社連携連絡会を設置。一日も早い復旧に向け、関係者が結束して取り組む体制を組んだ。

激しい揺れを物語る中央制御室・会議室の脱落した天井

 東日本大震災でも無傷で済んだタービンの関連設備がなぜ損傷したのか。復旧に当たる関係者の関心はそこに集まった。

 それは揺れ方の違いが影響したものと考えられる。東日本大震災と異なり、福島県沖地震は短時間ながら小刻みの激しい揺れが続いた。その力が軸受け台に集中し、損傷に至らしめたと推察される。

 損傷を見た真石恒一さん(新地発電所・機械グループマネージャー)は「これはまずい。経験のない部分がやられている。(復旧には)かなり時間がかかる」と思った。

 新地発電所は1、2号機ともに出力100万キロワットと、単機としては国内最大級の電力を生む。供給先の東北電力や東京電力にとっては安定供給上、重要な電源だ。天災によるトラブルとはいえ、この電源を長期で欠いたら、電力の安定供給を損なう恐れがある。
 

未経験の要素

 
 ただ設備被害は深刻で、軸受け台の修復など未経験の要素もある。復旧に1年以上かかるとの見通しがすう勢だった。軸受け台の修復に約8カ月要し、発電所の運転再開は今年4~5月にならざるを得ないと思われた。

 これでは電力需要が増える冬季に間に合わない。また今冬は非常に厳しい電力の需給状況が予想された。

 早期復旧を迫られる中、幸いだったのは、1号機の定期点検が地震翌月(3月)に控えていたこと。このために確保した作業者と資機材をそのまま復旧工事に振り向けることができた。

 これで「1号機を優先に復旧する」方針が決定した。工事の優先順位が決まり、現場も動きやすくなった。

(この記事は連載[福島沖地震から1年-相馬共火・現場は]の初回です)

電気新聞2022年2月14日