オーストラリア産一般炭先物価格の高止まり傾向が続いている。7日の終値は1トン当たり236ドルで、年初からは約5割の上げ幅。市況に影響を与えたインドネシアの石炭輸出動向は正常化に向かう一方、ウクライナ問題に連なるガス供給懸念で欧州での石炭需要が伸長。世界的な石炭価格の押し上げ要因になっているとみられる。脱炭素の影響で新規投資は減る一方、厳冬やガス価格高騰などで石炭需要はむしろ高まっている。石炭需給を巡る不均衡が顕在化している。

 1月1日に始まったインドネシアの石炭禁輸措置は正常化に向かっており、1月27日には措置の全面緩和を発表した。日本政府関係者によると、日本向けを含めた待機船は順次出港している。石炭の積み込み遅れなどにより1月出港予定の船が港に滞留する状況も一部あったが、現地当局が部局横断で対応に当たっているもようだ。禁輸緩和を受けて豪州炭価格は下げに動いた。

 ただ、「インドネシアの措置が今後どうなっていくかは、正直分からない。禁輸措置の開始自体も突然通告された」(同じ政府関係者)。インドネシア政府の方針・施策は引き続き注視していく必要がありそうだ。

 直近ではウクライナ問題が石炭需給に影を落としており、豪州炭も再上昇している。欧州では昨年から天然ガスの備蓄不足や風況の悪化によって石炭火力の稼働が増加。今回のロシア産ガスの供給不安がその動きに拍車を掛けている。石炭市場に詳しい関係者によると、昨年12月と今年1月の欧州の石炭輸入量は前年同期から5割近く増加しているという。
欧州の石炭需要の6~7割程度はロシア産が占める。軍事衝突後の石炭供給途絶を恐れる一部事業者の間で、南米コロンビアや北米、豪州など他国からの分散調達に走る動きがあるようだ。結果として各地の石炭市況に影響を及ぼし、豪州炭を含めた世界的な価格高騰の一因になっている。

 一般炭価格は“発射台”が高い状況にある。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の國吉信行・石炭開発課専門職は「化石燃料への投資が減っていて、サプライヤーが強い状況が続いている」と指摘。脱炭素に伴う構造的な需給の不均衡で石炭価格が高止まりしやすい状況だという。そうした基調に今回、インドネシアやウクライナを巡る問題が付加要素となった。

 21年夏の中国での大規模減産など、供給不安要素は各所にある。新たなリスクが顕在化すれば需給バランスはさらに悪化し、再び大幅な高騰局面に至る可能性がある。

電気新聞2022年2月9日