電気自動車(EV)は、走行中の二酸化炭素(CO2)排出量削減だけでなく、再生可能エネルギーの導入拡大に対する電力系統安定化への貢献といった付加価値も有するキーテクノロジーである。今回を含め全5回にわたって、EV普及に向けた電力中央研究所の取り組みを紹介する。今回は、EV普及に伴う系統影響について、次回以降は、DR(デマンドレスポンス)やVPP(仮想発電所)での活用、非接触給電やヒートポンプ空調などの周辺技術を紹介する。
 

脱ガソリン、世界で加速

 
 「脱ガソリン車」が世界で加速しており、新車販売に関する高い電動化目標が掲げられている。我が国においても、欧米に比べると普及の加速度は小さいが、2030年代半ばまでに新車販売の全てを電動車にする方針が示されている。さらに近年では、カーシェアリングや所有者向けの電気料金割引サービスなどの普及促進活動に加え、一充電走行距離を伸ばす目的で搭載電池の大容量化も進んでいる。この大容量化に併せて、充電器の高出力化も進められており、多数台のEVによるピーク負荷の発生が懸念される。

出典:高木,田頭,浅野:「電気自動車の使用者利便性を考慮した夜間充電負荷平準化対策」電気学会論文誌B,Vol.135,No.1,pp.9-17(2015)

 全自家用乗用車がEVに置き換わることで増加する電力量(キロワット時)は5~10%程度と見込まれる。一方で、充電に伴う最大電力(キロワット)を、定量的に示すことは容易でない。「EVが大量に普及した場合、ピーク負荷が発生するのでは?」という問いへの答えは、「EVがどれだけ同時に充電するかによる」となる。例えば図1は、全国の自家用乗用車を対象に、EVの普及率を20%、自宅充電器の定格出力を3キロワットとして、中間期休日の負荷カーブを試算したものである。図1破線のように23時に全EVが充電を開始すると急峻なピークが発生する。一方、図2のように、充電必要時間(=満充電までに必要な充電量÷充電器出力)に応じて、充電開始時刻を分散させると、図1実線のように、ほとんどピークは発生しない。図2では、台数が多く充電必要時間が短いEVの充電時間帯を広く分散するようにしている。

出典:高木,田頭,浅野:「電気自動車の使用者利便性を考慮した夜間充電負荷平準化対策」電気学会論文誌B,Vol.135,No.1,pp.9-17(2015)

 続いて、充電器出力変化の影響について述べる。例えば普通充電器の出力を3キロワットから6キロワットに変更した場合、全EVによるピーク負荷は1~2割程度の増加試算できる。まず、全EVによる充電負荷Pは次式のように、充電器1台当たりの出力pに、充電しているEVの台数Nの掛け算となる。
 
P=N×p
 
 ここで、充電器の出力が大きければ、充電継続時間が短くなるので、同時に充電するEVの台数は少なくなり、お互いの影響は相殺する。従って、充電器の出力が増加しても、多数台のEVが特定の時間帯に同時に充電するような間違った誘導さえしなければ、ピーク負荷へ与える影響は小さくできる。

 例えば、電気料金の設定で誘導するなどして普通充電器による充電時間帯を分散できれば、ピークは発生せず、電力供給に問題は生じない。一方、極端に短時間に充電負荷が集中すると問題が生じる。
 

充電器の最適配置を検討

 
 以上では、系統全体への影響であるピーク負荷を考察した。一方、局所的には電圧変動や配電系統上の機器の過負荷などの問題が懸念される。特に、急速充電器の高出力化による影響は大きいと予想される。当所では、地図データの道路上でEVの走行を模擬できるEV交通シミュレーターを開発しており、これまで、急速充電ステーションの最適配置に関する検討などを行ってきた。本シミュレーターでは、EVの電池容量や充電器の出力などをパラメーターとして与えることで、地域ごとの充電需要を計算できるため、上述したような局所的な問題に加え、V2G(車から系統への給電)やDRの効果を検討している。次回はその一部を紹介する。

電気新聞2021年10月18日