東北電力は25日、プランツラボラトリー(東京都中央区、湯川敦之代表取締役)と連携し、農家やスーパー向けに小型の省エネ型植物工場を提供すると発表した。最適なエネルギー管理で工場を運営し、天候に左右されないハウス栽培で安定した野菜の収穫を実現する。スーパーの店舗に設置すれば「店産店消」を実現。野菜の流通コストを省ける。

 電力業界では大規模な植物工場で同種のサービスに参入した例はあるが、ハウス面積300平方メートル程度の小規模な施設で進出するのは初めて。

 東北・新潟の基幹産業である農業も、担い手不足や高齢化、災害多発による収穫への影響など課題を抱える。こうした課題に応えようと、東北電力は小型植物工場を提案していく。

 工場は農業用ハウスと同じ設計ながら、台風や積雪への強度が高い。大規模工場に比べて短期間、低コストで設置できるのも長所だ。エネルギーの供給・管理は、同社の「エグゼムズ」により太陽光発電と蓄電池を組み合わせた「創・省エネ屋内農場システム」を導入する。優れたハウス栽培の特性を生かし、農家の作業負担を軽減し、無農薬野菜の安定した生産を実現する。東北電力とプランツの両社は、工場を採用した農家の販路拡大も支援する。

 植物工場の提案先として、スーパーなど小売事業者も有望だ。野菜の流通では、コストの削減と輸送に伴う二酸化炭素(CO2)の排出削減が求められる。植物工場を店舗あるいは周辺に設ければ「店産店消」を実現。消費者には鮮度の良い野菜を提供できる。

 農家向けの実証プラントでは、屋内農場システム(ハウス面積約300平方メートル)を太陽光発電(出力約130キロワット)と蓄電池(容量約150キロワット時)で稼働し、1日にレタス約千株の収量を確認する。来春には出荷する予定。

 東北電力は今回の小型植物工場事業について「エネルギーマネジメントなど関連サービスを通じて、2030年度までに累計50億円の売上高を目指す」としている。

電気新聞2021年11月26日