冬本番を前に、マレーシア産LNG(液化天然ガス)の供給が細る懸念が高まっている。市場関係者によると、マレーシア沖合のペガガ油田で水銀濃度が上昇していることを背景に、国営石油会社のペトロナスが販売数量の下方修正(DQT)を求めている。同国産LNGを長期購入する日本の電力・ガス会社は少なくない。他国でもLNG生産トラブルが発生しているもようで、市場関係者の間では、卸電力市場価格が高騰した昨冬の再来を警戒する声が出ている。

 マレーシアから3月までに出荷されるLNGカーゴが遅延や一部キャンセルになる可能性があるという。市場関係者は「既に卸電力市場への影響は出始めている」と指摘する。日本卸電力取引所(JEPX)の発電情報公開システム(HJKS)によると、西日本エリアの複数の電力会社が燃料制約を理由にLNG火力の出力を抑制している。

 別の市場関係者も「スポットLNG市場で調達しようにも価格が高すぎる。次のLNG船が到着するまで燃料の消費ペースを抑えるしかない」と話す。アジア向けスポットLNG価格「JKM」は歴史的高値圏にあり、12月の先物価格は100万BTU(英国熱量単位)当たり31ドルを超える。

 スポット電力市場価格は、燃料高を背景とする売り入札価格の上昇により、需要の端境期としては高水準で推移している。最近は特に西日本エリアの価格上昇が目立ち、13日受け渡し分の取引では、土曜日にもかかわらず24時間平均で20円近い値をつけた。

 市場関係者によると、インドネシアや米国でもLNG生産トラブルが発生するなど「世界的に供給は不安定」という。冬本番に向けて需要が伸びれば需給状況が逼迫し、再び燃料や卸電力価格の高騰を招く恐れがある。

電気新聞2021年11月16日