EV導入拡大に当たって、充電の課題は避けて通れない。充電の課題は大きく分けて、インフラ整備に伴う課題とユーザーの利便性に関する課題の2点に分けられる。前者は特に充電需要に対応した電力系統の構築と充電設備投資、後者は公共用充電設備の整備が挙げられる。EVの本格的普及をにらみ、電力系統への過負荷を避けるべくスマート充電義務化に踏み込んだ英国の政策と、急速充電を中心とした公共用充電施設の運営の課題について説明したい。
 

英は遠隔制御可能な充電器に限定

 
 EVの導入拡大が続き、2021年6月には新車登録台数でEV10.7%、PHEV6.5%のシェアを占めた英国では、EV導入拡大に伴って充電需要の爆発的な増加が懸念されている。英国運輸省は充電需要の制御による負荷移行・ピーク需要抑制を目指すべく、Automated and Electric Vehicles Act(自動運転車・電気自動車法)を成立させた。18年7月19日に国王裁可を受けた本法律により、19年7月以降に英国で販売できるEV用充電器は遠隔制御が可能なスマート充電器のみに制限される。制限の対象は、公共用充電器だけでなく、一般に販売される全ての充電器である。

 同法では、スマート充電器をリモートアクセスが可能で、外部からの充放電速度指示に応答でき、充電情報や地理情報など充電器に関わる情報を所定の人物に送信可能な充電器と定義している。

 同法の目的は、スマート充電器を普及させることでEVの充電パターンを第三者の事業者がリモート評価・管理ができるようになり、需要の急増から電力システムを保護することにある。日本においても、電気自動車導入拡大が進んだ場合、充電需要が急激に増加する可能性があり、電力系統保護の観点から、普通充電器を含めた遠隔制御やデータのオープンアクセス、スタートアップや小売電気事業者によるスマート充電サービスの育成が必要になると考えられる。

 さて、EV充電器についてはユーザーの利便性に関する課題も忘れてはならない。日本の公共用充電器の普及台数は、EVの導入台数(累計)が増加しているにもかかわらず、17年以降横ばいとなっている。一般的に、EVユーザーの充電手法は基礎充電と経路地充電に分けられる。前者は家庭や職場における普通充電、後者は高速道路のサービスエリアなどにおける急速充電が分類される。英国では、現在公共充電施設が2万5千カ所存在するが、30年には28万~48万カ所の公共充電施設が必要になると予測されている(ビジネス・エネルギー・産業戦略省「電気自動車充電市場調査最終報告」)。今後、日本でもEV用の公共充電施設の拡充が必要になると考えられる。

 

ハイリスクでローリターン

 
 一方で、公共充電施設の運営は一筋縄ではいかない。公共用充電施設を運営する企業は一般的にCPO(Charge Point Operator)と呼ばれるが、CPOのほとんどが買収、もしくは特定目的買収会社(SPAC)と合併の上で上場する選択を行っている。CPOのビジネスモデルは一定の稼働や収益が見込める発電設備よりも不安定であり、年金基金のような低リスク長期投資型の機関投資家とは合わず、インフラ投資としては相当にハイリスク/ローリターンであると指摘されている。また、今後は超急速充電の必要性が高まると考えられ、さらなる投資拡大と急速充電器の投資回収手法とリスク特性にマッチした投資家の不在が課題として浮き彫りになると見られている。係る観点から、公共充電の拡充に当たっては政府支援が必要不可欠となるのではないかと考えられる。

【用語解説】
 ◆スマートチャージ 欧米の電力小売事業者や自動車メーカー、NPOなどが提供しているアプリケーションを通じて、電力需給バランスを反映した電力市場価格を参照し、安価な時間帯に充電を行うことで電力の需給バランス安定に寄与し、顧客は充電料金を抑えることができるサービスのこと。オランダでは、EV充電を活用し、周波数制御予備力に応札して調整力対価を顧客にシェアするサービスも登場している。

電気新聞2021年8月23日