早期の導入が待たれるドローン目視外飛行システム

 東京電力パワーグリッド(PG)などが出資するグリッドスカイウェイ(GSW、東京都港区)は、送電線や配電線の自動点検が可能なドローン管理システムの試作版を完成させた。多様なメーカーのドローンに対応できるほかLTE通信を利用できる環境であれば遠方の見えない場所にも飛ばすことができる。2022年度から東電PGで試行的に導入するとともに、全電力での実証を行いたい考えだ。

 GSWのシステムはドローンを動かす「操縦者」、飛行を監視する「運航管理者」、現地で安全確認や機体配備を行う「補助者」で構成される。操縦者はタブレット上で機体選択、飛行区間設定、飛行開始の3つの操作のみでドローンを飛ばすことができる。

 飛行中は航空法の安全要件の監視、電力設備との衝突回避などを遠隔で実施。測量データを使い、設備情報の誤り、電磁界の影響、障害物、LTE不感地帯の有無も判定する。

 今年6月にはドローン規制緩和を目的とした航空法改正が行われた。目視外飛行については、山間部など「レベル3」のエリアで手続きを不要にするなどの緩和策が講じられるほか、市街地など「レベル4」の飛行も許可制で認められるようになる。航空法改正は22年12月に施行される予定で、機体認証、操作ライセンス、運航ルールについて国が検討を進めている。

 GSWは今後、システムの改良・調整を重ね、実運用を目指す。東電PGでは試験導入を経て、23年度から順次、各エリアで本格的に導入していく計画。25年度には東電PG内のレベル3エリア全てで対応可能な環境を構築したい考えだ。

 ドローンによる目視外点検は、点検作業の効率化によるコスト低減のほか、レジリエンス強化にも役立つ。19年の台風による千葉県の停電では、倒木などで道路が寸断され、配電線の状態を確かめることができなかった。GSWのシステムを使えば、現場に行けなくても損傷部位などを特定できるようになる。

 各電力で導入が進めば、相互支援などもしやすくなる。GSWの紙本斉士・チーフエグゼクティブオフィサーは「各社が導入したいと思えるようなプラットフォームにしていきたい」と述べた。

 GSWは電力設備の点検にとどまらず、物流企業などにも送電線上の航路を開放する検討を進めている。

電気新聞2021年10月14日