ホイールにモーターなどを内蔵。 ドライブシャフトといった部品を無くすことができる
 

日立製作所と自動車部品メーカーの日立アステモ(東京都千代田区、ブリス・コッホCEO)は30日、電気自動車(EV)向けのインホイールモーターを開発したと発表した。インホイールモーターはホイール内部にモーターやインバーターなどを備える駆動システム。ドライブシャフトなどの部品を無くし、モーターの駆動力をホイールに直接伝える。一般的なEVに比べてエネルギー損失を30%減らし、航続距離も10~20%程度伸ばせるという。

 四輪合計のモーター出力は240キロワットで、スポーツ用多目的車(SUV)タイプの車両への搭載を想定している。日立グループは今後、国内でインホイールモーターを搭載した試作EVの走行実験を行い、実用化への課題を洗い出す。

 EVは駆動システムを車体側に設けるため、バッテリーの設置スペースや車内空間を確保しにくい。インホイールモーターは、この課題を解消する製品として実用化が期待される一方、ブレーキやサスペンションなど基幹部品の大幅な改造が必要。車全体の製造コストが高くなる課題があった。

 日立グループが開発したインホイールモーターは磁石のN極とS極の向きを90度回転させて並べる「ハルバッハ配列」を採用し磁力を高めた。さらに独自開発の平らなコイルを高密度に並べて、モーターの小型・高出力化に成功した。

 モーターとインバーターの冷却配管も省スペース化を実現している。これらの技術により、ブレーキなどの構造を大きく変えずにインホイールモーターをEVに搭載できるようにした。

 今回の開発成果は、4日からドイツ西部アーヘンで開かれる自動車技術に関する展示会「第30回アーヘン・コロキウム」で披露する。

電気新聞2021年10月1日