2020年は、エネルギー業界にとって大きな転換期となった。10月に菅義偉首相のカーボンニュートラル宣言、12月にグリーン成長戦略が提示され、2050年カーボンニュートラルを実現するという方針が示された。実現には、太陽光+蓄電池(EV)だけでなく、洋上風力、水素といったエネルギーシステムの再構築が必要となる。その結果、化石燃料から電力をつくる現在のエネルギーフローに対し、再生可能エネルギー電力から水素などの燃料をつくるというエネルギーフローの転換(EX)が起こると予想される。

 2017年に出版されたUtility3.0では、脱炭素化に加え、人口減少や電力自由化、デジタル化、分散型発電などにより、大きく変化する2050年のエネルギー産業像を提示している。限界費用ゼロでCO2(二酸化炭素)フリーの再エネ電源が潤沢に導入されることを想定した電力市場の変革の必要性、「kWhを売る」から「顧客体験を売る」にシフトする小売電気事業、デジタル化が導くインフラ融合が人口減少時代の生活維持のためのソリューションとなる可能性などを描いている。また、CO2の大幅削減のためには「電源の低炭素化×需要の電化」がほぼ唯一の選択肢であることも示している。
 

実質ゼロには「電源の低炭素化×需要の電化」

 
 2020年10月の菅首相のカーボンニュートラル宣言により日本においても2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指すという方針が定められたが、これを実現するためには、「電源の低炭素化×需要の電化」を大きく加速させる必要がある。

 電源側では再生可能エネルギーコストの削減、特にポテンシャルの大きな浮体式洋上風力のコストダウンがキーとなる。需要側では、サステナブルに脱炭素化を進めるためには、電化の進展が重要になるが、高温熱需要のような電化が経済的に難しい領域などに対しては、グリーン水素のような再生可能エネルギー電力由来のカーボンフリー燃料の利用(間接電化)といった技術が有効となる。

 電源と需要をつなぐ電力ネットワークは、再生可能エネルギーの大量連系に伴う混雑や調整力不足といった課題に対応するため、配電系統だけでなく送電系統に対しても、デジタル化・直流化といったスマート化を進め、統合コストをいかに抑えるかがポイントとなる。

 浮体式洋上風力の大規模ウインドファームによる発電、基幹産業分野での電化促進とそれを結ぶ送電系統のスマート化、水素を利用した発電・間接電化・フレキシビリティーの供給というエネルギー事業の形が、Utility3.0の次に来るUtility3.Xの姿だと想定している。

 Utility3.Xの世界では、現在の化石燃料(一次エネルギー)から電力を生産(二次エネルギー)するというエネルギーフローから、再生可能エネルギーを主体としたカーボンフリー電源が起点(一次エネルギー)となり、その電力から水素などの非化石燃料が製造(二次エネルギー)されるというエネルギーフローの転換EXが起こることになる=図1
 

エネルギー自給率も飛躍的に向上

 
 再生可能エネルギーのコスト削減、および混雑・変動の吸収が前提とはなるが、これが実現できれば、環境面だけでなく、図2に示されるエネルギーフロー図のように国内のエネルギー自給率が飛躍的に高まり、エネルギーセキュリティー面での貢献も期待される。

 次回以降、電源、需要、ネットワーク面での見通しとその課題などについて、それぞれ解説していく。

【用語解説】
 ◆間接電化 化石燃料需要に対し、ヒートポンプやIHなどによる電力を直接的に利用する電化(直接電化:Direct Electrification)に対して、再生可能エネルギーなどの電力から製造したグリーン水素などの燃料を利用することを間接電化(Indirect Electrification)と呼ぶ。米国EPRI(Electric Power Research Institute)およびGTI(Gas Technology Institute)が推進し、東京電力も参加しているLCRI(Low-Carbon Resources Initiative)プロジェクトの中で用いられている用語。

電気新聞2021年7月12日