起工式であいさつするイーレックスの本名均社長

 イーレックスは16日、国内初となる商用水素発電所の起工式を山梨県富士吉田市で開いた。岩石由来の触媒を使い安価に水素を製造できるハイドロゲンテクノロジー(東京都中央区、山本泰弘社長)の技術を採用。出力は360キロワットで、来年3月の運転開始を目指す。イーレックスは同発電所で連続的な水素生成や稼働の安定性などを確認し、来年には1時間当たり1500立方メートルの水素を製造できる国内最大規模の設備を稼働したい考えだ。

 起工式はイーレックスの本名均社長、ハイドロゲンテクノロジーの山本社長のほか、設計・建設を担う日揮の山田昇司社長、富士吉田市の堀内茂市長らが列席。工事と関係者の安全を祈願して神事を行った。

 発電所にはドイツ製の水素専焼ガスエンジンを導入し、併設する水素製造設備から燃料を供給する。岩石由来の触媒と水を反応させる独自手法を用いることで、従来技術の5分の1以下となる1立方メートル当たり30円のコストを目指す。

 発電所は系統連系して電力小売事業に活用することも視野に入れるが、現時点で販売先は未定という。

 竣工式の後に電気新聞などの取材に応じた本名社長は、同発電所の建設と並行して水素製造設備の大型化に向けた検討を進める考えを示した。ハイドロゲンテクノロジーの技術を使えば「水素のロジ(輸送)が必要なく、必要な場所で作れる」とし、低コスト化に加え離島などでの活用も見込めると語った。

 現在、国内では福島県浪江町にある、1時間当たり1200立方メートルの水素製造設備が最大規模という。本名社長は、来年にもこれを上回る同1500立方メートルの設備を2カ所程度で稼働したいと述べた。

 現状では水素専焼発電設備の機種や容量が限られるため、大型設備で製造する水素は燃料電池車(FCV)への供給などさまざまな用途を検討する。

電気新聞2021年9月17日